track n stars on field.

JIN Yeo Wool

担当教員によるコメント

見えざる境界とそれに対峙する自己。自らの身体と不確実な他者との距離。そして無感覚なまま消費され加速化する時間の単位。アイデンティティの概念さえ消費物となり、中心が空洞化していく。Jinによって生活雑貨を寄せ集めて星に見立てロボット掃除機に乗せられたそれらは、いかにも自由に動き回るように見せかけながら、プログラムという名の「公転」からは逃れられずに放置され続ける。安全地帯としての「私」の領域も、ラッピングされることでやっと立ち現れる不確実かつ反求心的な「祖国」であるとも言える。Jinは自身の生きる時代と世界をひとつの風景として描いた。それはただの写生ではない。絶望や放棄の先にある、新たなアイデンティティ獲得を表明する極めて真摯な作品なのである。

教授・小泉 俊己