空のあいだ, 居場所

蔵屋 恵実

担当教員によるコメント

蔵屋さんの絵には、アニメ調の人物、そしてその背景には暗い歴史を背負った場所が描かれている。見る人にとって、この歴史的な場所性とアニメ調の人物との関係性を探ることが、蔵屋さんの表現を知るためには必要なのかもしれない。しかし、蔵屋さんの絵は、そのような見かただけではなく別側面からも見ることができる。それは、絵の表情、筆致や絵具の物質的な定着感が、個人的なイメージを伝達するためだけに表現されているように見えないのである。別の言葉にすれば、半分、光りに絵が溶けこんで、形がつくられると同時に無くなっていく、そんな印象を抱かせるのだ。よくある絵のあり方は、ひとつのイメージを再現することに偏っていき、一方通行的な表現になりがちだが、蔵屋さんの絵は、そのような傾向に落ち入ることがない。常に複数のイメージ(他者)と向き合い、また蔵屋さん自身がキャンバスを境界として捉えることからも、両面性、表裏一体的な視点によって描かれた絵画は、多種多様な解釈を可能にしながら、空虚な光りの世界にも導いてくれるのだ。

教授・栗原 一成

  • 作品名
    空のあいだ, 居場所
  • 作家名
    蔵屋 恵実
  • 作品情報
    『空のあいだ』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H145×W145cm

    『居場所』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H259×W194cm
  • 学科・専攻・コース