Old memories

山田 渓樹

担当教員によるコメント

頑固なまでに自分の幼少時に与えられたイメージを繰り返し描き出すことに拘り、その意味をリトグラフの技術を使い、じわりじわりと現在も手探りしながら制作している学生です。モチーフは、ただ可愛いだけのクマのぬいぐるみではありません。そこには物悲しいぬいぐるみの生涯が刻印されていきます。大量生産された、最初は全く同じ見目のぬいぐるみたちは様々な人の手に渡ります。生涯大切にされるものもあれば、時が経ち徐々に汚れ、そして気がつけば山積みにされたゴミの山の一員になるものも。彼らを擬人化することで、その排他的な悲しみや無気力さ、そして人の人生に経過を委ねるしかないぬいぐるみの生涯を、ある一種の抗いのような批判を込めて山田は制作しています。彼の作品から、捨てられた彼らの目に映る風景を感じて頂きたいと思います。

教授・佐竹 邦子