20

阿部 美優

担当教員によるコメント

通過儀礼の一つと言える成人の日は、固定化した男女の在り方が装いによって顕在化する場でもあり、そこに疑問や抵抗感を覚える者も少なくない。母親が自身の振袖を娘に託すことを願い、その話を聞きながら成長したXジェンダーである阿部も、成人の日に振袖を着ることができなかった一人であるが、一年半後に“帰省をして振袖を着る”ことをアートプロジェクトとして敢行し、自叙伝的ドキュメンタリービデオ作品『20』を制作した。長閑な実家の様子や着付けを手伝う母親・祖母の笑顔が、葛藤の象徴であった振袖を纏い近所挨拶やお宮参りをする作者の様子と共に映し出されていく。そのモニター横には作者自身のジェンダーについて語られた短い文章が添えられ、鑑賞者の心を揺さぶる。彼女が自身と向き合うために制作され成立した本作は、初々しく真摯であると同時に、アートの力強さを存分に持った秀作となった。

教授・笠原 恵美子