夢現

吉野 慧祐

担当教員によるコメント

大理石に彫り込まれた女性像に背後霊のように張り付いた蛸?! 一体何が起こっているのであろうか。両者のイメージは具体的に表現されているが、大理石の白い形象が脳内の画像処理に一層の時間を要する。作者は現実とも仮想ともつかないイメージを表現したと言う。柔軟で可塑性のある素材ならば容易かも知れない絵画的な描写をあえて、大理石という「彫刻」としての歴史性と象徴性を予め備えた素材を用いながらも、私的で夢想的なイメージが見事に表現されている。作者のひたむきな素材への接近が、感性・技術・テーマの結晶となった作品と言える。

教授・水上 嘉久