自己の救済

野口 裕香

担当教員によるコメント

人の心には、外界の影響を受けさまざまな感情がわき起こる。心が波立つことも、鬱積した感情が溢れでてしまうこともある。 野口さんは “描くこと”で、そのような心理を意識化させ溜まったフラストレーションを浄化している。“描くこと”は身体の内の混沌を吐き出すような行為と述べていたが、画面全体の大胆さと細部の繊細さが光っている。また、装飾紋様、遺跡、文字などに強い関心があり調査した成果が反映されている。実直に試行錯誤を重ね、染め、刺繍、顔料での描画を複雑に融合させた大作が完成した。タイトルは「自己の救済」とある。他者には伺いしれない内的な苦しさを解放する挑戦だったのではないだろうか。ここから新しく作家としてどのように進んでいくか期待している。

教授・川井 由夏