DISTANCE

横井 菜穂

担当教員によるコメント

急速なテクノロジーの進展から生活の利便性が高まり、さらに人間の能力を拡張する時代の流れがある。一方で、日常的な非対面のコミュニケーションや身体を使う機会の減少など、自らと肉体との希薄な関係に違和感を覚える人がいる。横井さんは、その一人である。生身の身体をめぐる憂慮から、目、耳、口、手、足、その役割と動きに焦点をあてた。硬質で人工的な素材を撚る、束ねるなどの加工から始め、手の動作の膨大な繰り返しが集積し連結していく。まさに氷柱や鍾乳石が時間をかけて形成されるように、ある日かたちをなすのだ。織る、編む、組むなどの技法に習熟し、卓抜した手わざを発揮することで美しく精緻な表現をうみだした。半透明のかたちの奥には、原初的なもの、つくりだす喜びが息づいている。

教授・川井 由夏

  • 作品名
    DISTANCE
  • 作家名
    横井 菜穂
  • 作品情報
    素材:テグス、針金、ビニール、刺繍糸、シリコンチューブ
    技法:編み、プライスプリット、オリジナルテクニック
    サイズ: H1450×W2600× D850mm(5点)
  • 学科・専攻・コース