卒業制作優秀作品集2021
芸術学科

土屋 早紀子

シケイロスの実験的表現によるヨーロッパ中心主義の超克

シケイロスが1920年代に興ったメキシコ壁画運動の後も終始「壁画」という形式を追求する作家活動を継続した意義について、年代ごとに政治的活動や作品の制作手法およびテーマの変遷に焦点を当てて分析を進めることで、最終的にはブルジョワ的西洋芸術の文脈に位置づけられる壁画の制作手法の刷新こそがまさに革命家シケイロスが生涯にわたって取り組むべき仕事であり、西洋美術史が内包するヨーロッパ中心主義を超克しようとした試みであったことを明らかにする。

担当教員によるコメント

ダビッド・アルファロ・シケイロス(1896-1974)は、1920年代に始まったメキシコ壁画運動の主要な画家である。土屋さんは、シケイロスが特殊な塗料や変形キャンバスの採用などによって壁画制作の新手法を探求した点に着目し、そうしたシケイロスの実験的表現こそ、メキシコ人壁画家たちが無意識的に内在化していた植民地時代以来のヨーロッパ中心主義を彼が克服するための方法であったと、鋭く指摘している。そうして土屋さんは、アカデミズムの権化たるタブロー画の対極に位置づけられるような作品を、シケイロスが新しい技法をもって追求していたことを、詳細に明らかにした。ホイットニー美術館でのメキシコ壁画展を訪れて実作品の調査を行った点や、英語文献を積極的に活用した点も、大いに評価に値する。

准教授・大島 徹也

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