アップグレードされる黒人映画 華麗なるスパイク・リーの復讐劇

仁王頭 遼

作者によるコメント

映画の中の黒人は長らくステレオタイプ化され続け、その歴史を1915年の『国民の創生』に持つ。『国民の創生』は「映画」をはじめて大衆エンターテインメントとして飛躍させその偉業を映画史に刻むが、一方で近年、白人至上主義的な内容が非難された問題作だ。論文では本作のストーリーと歴史的史実を照らし合わせ、『国民の創生』の負の側面を明瞭にしていく。また、現代のアメリカ映画が黒人表現をどのようにアップデートさせたのか、スパイク・リーの映画作品から検証していく。

担当教員によるコメント

優秀な学生というものは、こちらから何をしなくても自ずと成長してくれるものだ。仁王頭君は私が担当している映像文化設計ゼミに所属しているわけではなかったので、2度面談しただけだ。2度目に会ったとき、スパイク・リーの新作『ブラック・クランズマン』を取り上げて、近年のブラック・ライブズ・マターのムーブメントと絡めて書きたいと言っていた。そこで、リーの作品は、対極の白人史上主義からアメリカの歴史を描いた名作である、グリフィスの『国民の創生』を批評しているのだと話した。そして、そのDVDを貸してあげた。あとはメールのやりとりも何もない。気がついたら、年明けにこのしっかりと書かれた論文が手元に届いていた。仁王頭君が優秀な書き手であることはわかったが、20年後や30年後も優秀であるという保証はない。自分の筆力におごることなく、今後も地道に研鑽を積んでほしいと願っている。

准教授・金子 遊