変幻

田中 礼美

作者によるコメント

金属はただ硬くて重いだけではない。金属板を叩いて形を成す鍛金は 軽くて丈夫なものが作れる。 その利点を使い、軽さと柔らかさを意識しながら化けてふわりと飛び跳ねる瞬間の狸を表現した。 自身が素直に素材と技法に向き合い制作した作品である。

担当教員によるコメント

主に銅素材(銅板)を鍛金技法である絞り・接合・色上げ技法を駆使し、狸が煙と共に「変幻」する一瞬の姿を捉えたコミカルな表情の造形は、作者が金属造形作品として表現・追求したものである。
狸が持つ柔らかい動きや質感を出す為に様々な種類の金槌や当金を使い造形し、頭部・顔の目や毛並みなどの細やかな表情は各種の鏨によって丁寧に表現されている。別々に制作した各パーツを接合(TIG溶接)する為には造形のバランスと組み立てる順序を配慮し原型となるモデルやワイヤーフレームなどの事前準備や色上げ技法(硫化、緑錆)などの仕上げを含めた制作工程の段取りが重要な要素であった。その計画的な制作姿勢は評価出来るものであり、作者の世界観を表現した優秀な作品である。

教授・手銭 吾郎