まとか

木村 佳奈

作者によるコメント

この作品は、生まれて間もない赤ちゃんが発する「アー」「ウー」という母音1音だけを使った声のようなものである。
赤ちゃんは、それが何かわからないまま口から出る音に反応して楽しんでいるようにも思える。物を造ることにも似たような感覚が私にはある。不確実で曖昧なものを探ろうとすることが、何か大切なものと出会いなおしているように思えるからだ。作品を介して観る人にも、その何か大切なものが存在感をもって現れて欲しいと思う。

担当教員によるコメント

木村佳奈の発する「出会い直す」とは美しい響きを持ちます。彼女は新生児の言語以前の発声を未知への働きかけであり、それを楽しんでいると見て取ります。さらに自身の物を造る行いと同義であるとも語っています。「手の仕事や跡が自ら造ったもの」が「僅かに変容してものとしての存在感」への変貌です。彼女の素材との応答は一瞥では認識し難い模糊とした造型となっています。新生児が発した音への反応する行為と、制作者の可塑性を持ち固有の形状を持たない土へ向けての働きかけには、共に蒙昧な外部世界を自身の身体を駆使し掴もうとする必然があります。現在において分かりやすさへ偏りがちな我々が、忘れてはならない掴みとりにくい外部世界への出会い直し、働きかけの重要性です。

教授・井上 雅之

  • 作品名
    まとか
  • 作家名
    木村 佳奈
  • 作品情報
    作品形態:台置き
    技法・素材:陶
    サイズ:(画像1左から)H200×W450×D330mm、H200×W370×D220mm、H250×W430×D280mm、H170×W400×D240mm
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