境目〜不鮮明なセカイ〜

早田 実和

作者によるコメント

「私」の中には「私」だけではない存在が含まれている。側にいる人や置かれた環境、経験でさえも私を作り上げた一部だ。ここに明確な境目は存在するだろうか。
重なり合う環境で物事が存在するならば、このセカイの輪郭線や境界線は不鮮明であると考えた。混じり合う金属の細い線が、そんな淡い情景を表現している。

担当教員によるコメント

“実現出来るかどうか”よりも“実現したいかどうか”に、真っ直ぐに向かっていくという印象の学生であった。不思議と、努力とか貪欲とかいうような重たい言葉は似合わず、もっと冴え冴えとしていて、まるで当たり前の様にそれを行なう。面白いと思う興奮と、やりたい衝動が先ずあり、そして動き続ける。何かを生み出す際の重要な資質である。卒業制作では、自己と外部との関係性を考える事から派生し、「この世の事物は重なり合って存在している」として、「不鮮明な境目」の表現を試みた。沢山の鉄線を溶接して見栄えのする壁掛け作品に仕上げたが、一方、構成に気を取られ、当初の目的から多少離れた向きもないではない。思考を具現化する難しさに立ち向かった彼女が、今後描く未来を応援したい。

非常勤講師・留守 玲

  • 作品名
    境目〜不鮮明なセカイ〜
  • 作家名
    早田 実和
  • 作品情報
    技法・素材:鉄、着色方法・クロームメッキ
    サイズ:H2200×W700×D50mm
  • 学科・専攻・コース