建築が生み出す人の流れ

高源 佳希

作者によるコメント

自身が暮らす若葉台の街に、地域の人々のための空間を設計したいと考えた。
そこで、若葉台のスイミングスクールでコーチをしていることをきっかけに、温泉を含むリラクゼーション施設と、子供から大人まで利用するスイミングプールを設計した。

山を切り崩してつくられた街である若葉台特有の高低差を利用し、フロアレベルの異なる分棟の配置計画とした。
建物が分かれることによってその間に新たな道がうまれ、隣接する若葉台公園や保育園へと続く道となる。施設を利用する人と道を歩く人のアイレベルを考慮しながらボリュームの配置を検討し、建築が園路をゆるやかに繋ぐように計画した。

人々の生活を豊かにする場所であるのと同時に、心地の良い通り道を生み出す建築となる。

担当教員によるコメント

3年生の課題を通じて大きく伸びた印象があった。そして、ともすればスルーしがちな自らの建築的視点を見失うことなく、なんとか解決しようという姿勢にさらなる伸び代を見た。地元のスイミングスクールの改築計画である。日々利用する身近な対象は、とかく小さな問題解決的な袋小路にハマりやすく、マクロな視点が疎かになりがちだが、丘陵地の特性を読み込んだ建築へのアプローチは手堅かった。惜しむらくは、大きな架構が必要なだけに、構造的なアプローチが足らなかったことか。コロナ禍、学生同士のコミュニケーションに支障をきたすなか、危うく成立しているディスカッションのムードメーカーとして振る舞ってくれたこと、たいへん感謝したい。少ない機会が有意義な時間となった。

教授・松澤 穣