視線の先にあるもの

黒木 望実

作者によるコメント

人は目の前にあるものを、部分的に見たり、全体で見たり、様々な見方をして捉えている。プラ段を積み重ねた壁面を見ながら、近づいたり、離れたりする。このとき自分が対峙しているある範囲だけ、奥にある写真が浮かび上がるようにして見え、離れるとその範囲は広がる。
部分と全体を行き来するこの行為は、私たちが普段あたりまえのようにしているモノの捉え方ではないだろうか。
普段何気なくしているその行為を、身体行動をとおして意識することで、様々なものがみえてくる。

担当教員によるコメント

建築の道に進むべく、就職活動と並走しながらのテーマの決定には相当時間を費やした。2年、3年と設計課題を見てきて、設計の実力が伴ってきただけに、密かに設計系で臨むことを期待していたが、やはりインスタレーションと比べれば、設計とは図面と模型などの代替物に過ぎないので、地味に感じるのだろう。黒木はインスタレーションを選んだ。有り余る時間をひたすらつぎ込むこんだことを強調するプレゼンテーションには汲みしないが、その作業量に見合った効果と判断し評価をしている。つまり動き回る身体感覚と空間ボリュームを読み込んだそのスクリーンの大きさに妥当性を見たからだ。
社会人となって、設計の実力が発揮できることを願っている。

教授・松澤 穣