2021

杉本 菜々子

作者によるコメント

時間は有限で、”死”は他人事じゃない。2020年はそれを感じざるを得ない年でした。2019年の自分が悩んでいたことも、これからもっと楽しくなると思っていた大学生活も、ウイルスによって掻き消されてしまった。あのせっせと頭を抱えて暗くなっていた時間を、大好きな人たちと話す時間に使えばよかった。散歩をして、美味しいものを食べる時間に使えばよかった。もったいと思う後悔が浮き彫りになり、何か吹っ切れた気持ちになりました。自分の中で、だんだんと“死なずに歩く。生きる。”という、単純なテーマが現れ、このような壁画を描きました。

担当教員によるコメント

今しか伝えられないことがストレートに表現されていて心打たれた。未来を予見することなど誰にもできないが、わたしたちは未来に向かって歩んでいる。そのことだけは間違いない。ならば悲観することなく力強く進もうではないか。そんな決心が伝わってくる。そして今を生きるわたしたちは皆、そのこと自体によってすでに実行を伴っているのだから、自信を持とうではないか。そんなメッセージも感じられる。それをユニークな造形と色彩によって表現しようとしたところが素晴らしい。シンプルな要素の集積ながら、よく選び取られており、試行錯誤を経て悩み抜いた末の成果であることが伺える。この到達からは、さらなるチャレンジへと向かうための、大いなる力が授けられたはずだ。

教授・佐藤 直樹