コンプレックス

長谷川 未奈

作者によるコメント

「コンプレックス」は日本では劣等感のことを指しているが、実際の意味は、嫌悪はもちろん、愛などの感情が渦巻く複雑な感情だというところから作品作りは始まりました。私は数多くの身体的な劣等感をずっと憎んでいました。しかし、それに敢えて愛着をもって接した結果を24枚のポスターに込めました。24時間付き纏う負の要素に対する複雑な感情表現に心動かすことができれば幸いです。

担当教員によるコメント

モノゴトの境界が曖昧になり、溢れんばかりの情報に塗れていると人間は同化する傾向にあるらしい。創造者達もしかり。常識や流行という壁に個の力で反することで存在意義が認められてきたはずなのに、違いを重んじる思考を失いつつある。そんな中、ユニークな異彩を放ち続けたのが長谷川というタレントである。他が真似をしようとも近づくことの出来ない独自の“ズレ”を武器に、それを魅力として昇華させる能力が凄い。テーマ設定も描き出すビジュアルも、ありきたりな洗練を嫌い愚直に我道で勝負する。だから彼女のクリエーションは見る人の心に響くのだ。自らの身体を解放し、恥をかく勇気をもって挑んだこの卒業制作も勿論である。覚悟がある成果は美しい。

教授・澤田 泰廣