記憶綴置

萱沼 大喜

作者によるコメント

することもなく手持ちぶさたなのにまかせて、一日中、パソコンに向かって、心の中で繋がったり、ほつれたりするとりとめもない記憶を、あてもなく書きつけていると、(思わず熱中して)異常なほど、狂ったような気持ちになるものだ。

担当教員によるコメント

萱沼は入学当初から精力的にクリエーションに励む学生だった。その全てが文字を中心としたアプローチで制作されていたことを思い出す。時に厳しいコメントを伝えても怯むことなく、新しいステージにトライし続ける姿にデザインに対する尋常でない想いが感じられた。結局4年間、彼は最後まで意志を貫いたのである。
渾身の卒業制作は、時間、感覚、記憶、というキーワードの関係性を独自に成立させ、且つそれを徒然草の序文に準えて現代語化したコンセプチュアルな作品だ。ほつれ絡まるなんとも不安定で緻密な文字群がプリント出力の限界まで連なる。「文字はグラフィックデザインにおける骨格を成す。」その信念を忘れず、これからも思いっ切り創造の世界を歩んでいって欲しい。

教授・澤田 泰廣