光の粉, 物や人に落ちる光と粉の研究

橋本 龍起

作者によるコメント

粉をかぶったフォークを静かにどかすと、影だけが取り残されたような現象が起きました。物と地面との隙間や、内側へと入り込むようにして辿り着いた粉の一粒一粒が、そこに不思議な奥行を生み出していました。それは、粉が真っ直ぐ落ちたのではなく、僅かな空気の流れに乗って舞うように落ちていたからです。物を照らす光の存在と、粉という質量をもった物質が重力の影響を受けてひたひたと積もっていく現象に繋がりを感じました。空気を満たす光の未知を、粉を使って研究した作品です。

担当教員によるコメント

粉が光のように物体に降り注ぐ。影によって光の存在がわかるのと同じように、粉が物体に降り注ぎそのグラデーションが影を立体的に浮き上がらせる。粉を光の粒として捉えた着眼点は見事だ。地下鉄のホームの壁に付着したほこりがコンクリートの壁の僅かな凹凸を強調させていることに気づいたことがある。ほこりも粉も物体の裏側に回り込みそれを立体的に見せる。箒と籔に振りかけられた粉はその複雑な形の物体を平面に浮き上がらせた。なんでこんな現象を見つけたのだろう。目の前で起きている微細な現象を見逃さない橋本くんの感性に敬服する。彼は包囲光を露出させることに成功したのだ。

教授・深澤 直人、准教授・長崎 綱雄

  • 作品名
    光の粉, 物や人に落ちる光と粉の研究
  • 作家名
    橋本 龍起
  • 作品情報
    技法・素材:粉(目地材)、フルイ、ガーゼ
    サイズ:H900×W3600mm(3点)
  • 学科・専攻・コース