Ma femme fatale

袴田 真子

作者によるコメント

この作品は私の最も大切な友人との関係やその生き方について表現できればと思って描き始めたものです。友人の生き方に私は憧れ、変化し、同じ情熱と恨みを共有させて貰いました。作品の根本のテーマには私自身の情熱がありますがそれはその友人抜きでは表現できません。
私は自分自身の想像力と知識の足りなさから長い間、異性を同じ人間であると認識できていませんでした。それゆえに異性に求められる女性像を演じ一人相撲をしてきました。この作品は私が生きてきたこの社会が女性という属性に求めている像を悪女・処女・聖母という3属性に解釈して制作したものです。人に対するカテゴライズや、役割の向こう側に、果たして一つの人格が存在することを自分は想像できているのか常に問い続けていきたいです。

担当教員によるコメント

まるで中世の祭壇画のように、正面性の強い、象徴的な作品である。
日常の中で生まれた多くの疑問や不満を糧に思考し、その結果として、この作品は生まれたのではあるまいか。
「この社会が女性という属性に求めている像を悪女・処女・聖母という3属性に解釈して制作した」と作者は語っている。それぞれのポーズや身につけている服装によって、それぞれの役割を象徴させてはいるが、感情の起伏や情緒のようなものは希薄のような気もする。言いかえれば、まるで女神のようであるのかも知れない。
「人に対するカテゴライズや、役割の向こう側に、果たして一つの人格が存在することを自分は想像できているのか」と、自分への厳しい問いかけをもしている。純粋な張り詰めた思いが続く。
抜群の技術力、描写力によって、キッチリと隙間なくそれらのことが表現されているように感じた。

教授・岡村 桂三郎

  • 作品名
    Ma femme fatale
  • 作家名
    袴田 真子
  • 作品情報
    技法・素材:岩絵具、箔、水干、吉祥麻紙
    サイズ:H1260×W2940mm
  • 学科・専攻・コース