La Face Sauvage

宮林 妃奈子

作者によるコメント

「髪の毛」を主題として、世界の移り変わる小さな動きを観察しています。時代や地域によって変化していくなかで、生活において普段目にする人の毛は、私たちの身体の一部でありながら、ある目印のようにも感じます。形や癖、経験などを内在してゆく記憶の媒体として、また日々の環境の軌跡の記録として残されること、1本1本では形をともなわない「線」であるのに、人の頭・髪型として認識した際には、「面」として現れること、それらには、人の存在や気配を伴い、見え方の空間の変化をもたらします。
「髪の毛」を通して、内在された記憶やそこで立ち現れる風景、他者の存在の距離を絵画の中で展開させ、鑑賞者がハッとするような絵画を目指しています。

担当教員によるコメント

「先生、松を観に行きましょう。」息苦しいほどに伸びる新芽は風に弾んで、2年の彼女が描き溜めたドローイングと同じだった。展示空間に回り込むと逆光を受けてマットな白いグラデーションが目に飛び込んだ。近づくとキャンバスが瘡蓋のような質感でクリーム色に覆われ薄紙やらがデリケートに張り付いており、上部にはふわりと髪の毛らしきものが描かれ全てを惹きたてていた(*Keine Schokolade)。これまで制作された幾枚もの絵の中で、「白」が光となって昇りつめるのを幾度と目撃したが、彼女はその積み上げた階段を容易に手放してみせた。見たことの無い光を覗き込もうとする姿は独走者の静けさだ。しいんとした世界で小さなざわめきにそっと触れ、ものすごい精神力でこちらに放り投げてくる、そんな絵描きなのだ。

教授・村瀬 恭子

  • 作品名
    La Face Sauvage
  • 作家名
    宮林 妃奈子
  • 作品情報
    素材・技法:キャンバス、油彩、和紙、紙
    サイズ:可変
  • 学科・専攻・コース