空気のいきもの〜いのちを吹き込むかたちの研究〜

伊藤 綾香

作者によるコメント

「空気のいきもの」は、ポンプ式のカエルのおもちゃから着想しました。伸び縮みする素材に空気を吹き入れると、生き物のような弾力と動きが生まれるという発見から、素材や形状、接着方法を試行錯誤して制作しました。この「いきもの」は鑑賞する人が空気ポンプを踏むことで、それに呼応して動きます。体験を通して、シンプルな構造の中にあるおもしろさや空気の不思議さを感じていただけると幸いです。

担当教員によるコメント

伊藤さんは、発泡ポリエチレンシートを2枚重ねて熱圧着し、空気を吹き込むと膨らむメカニズムを発明した。シートが膨らむと、熱圧着された箇所がヒンジとして機能し、様々な動きを生じる。開いたり閉じたり、伸びたり丸まったりする立体は、まるで生き物のように振る舞う。それらは仮説と工作の反復作業で作られており、工学的なアプローチはない。「人はなぜ生き物のような振る舞いをするものに惹かれるのか?」という問いへの論理的な持論もない。しかし、誰もが彼女の作品を無心に楽しんでいたのである。
モノゴトの良否判断で理屈が優先されがちな現代において、人の本能や感性を刺激し、好奇心や探究心を煽るデザインこそが、瞬発的な喜びを与えられることを当研究は示唆している。

教授・安次富 隆