Materialize

関根 裕

作者によるコメント

写真を鑑賞する際は一般に写真が物質的な対象であることには言及されないが、写真は紙やインク、モニター、スクリーンといった物質的なものに依存してのみ私たちの前に立ち現れる。
私は写真が成立する物質的な条件に介入することによって、写真が認識される際の基礎的な構造を操作し、写真が物質的な対象であることを前景化させる。
そして、写真の物質的な現れを操作することによって、写真作品の鑑賞を視覚的に認識することだけではなく、質感を持った対象を今ここで身体的に経験することに紐付けたいと考えている。

担当教員によるコメント

関根の作品では、色面化した空の青、ブロック塀、壁に電線の影、平板な建物壁面に窓ガラスから反射される光、緑色のフェンスとフェンス奥側に落ちる影など、複数のレイヤー面が重なる構造を持った被写体が選ばれている。それは日常の風景を平板な層の重なりに捉え直すことで違和感を生じさせながらも、彼はそこで留まらず、実際の木板や額などを用いて、イメージを物の次元に繋げようとするのだ。つまり、レイヤー的な構造性をイメージと物の異なる次元間で往還させることにより、その構造はさらに複雑化し、我々の制度化された視線のあり方に強い揺らぎを起こそうとしている。まだイメージと物との関係性が弱いものの、この大変意欲的な試みは高く評価したい。

教授・大島 成己

  • 作品名
    Materialize
  • 作家名
    関根 裕
  • 作品情報
    技法・素材:インクジェットプリント、UVインクジェットプリント、ベニヤ板、コンクリートブロック、レンガ、トタン板
    サイズ:可変
  • 学科・専攻・コース