洗濯物と猫

三宅 葵

作者によるコメント

一緒に暮らしている猫との日常をテーマに作品を制作しました。
上京して、一人暮らしの生活がはじまった時、慣れない一人での生活や、小さい頃から一緒に暮らしてきた犬や猫がいない生活に寂しさを感じ、学部2年生の時に保護猫の里親になり、一緒に暮らすようになりました。それ以来、その猫は私にとって特別な存在になり、写真のフォルダの中や、友人と話す話題のほとんどが猫になっていました。そんな猫との日常を日々撮影している写真の中から作品のモチーフにしたい写真を選び出し、デジタル上でドローイングし、シルクスクリーンを使って作品におこしました。
影の形や使う色をもとの写真から離れすぎないように意識しながら、手が動くままに自由に描き起こし、好きな色を調合し、私らしい世界観を感じてもらえるような色面の作品を目指しました。

担当教員によるコメント

三宅の作品は、室内風景を撮影し、対象の陰影をデジタル上で色面に置き換えていく。その色面はシルクスクリーンで一定の厚みをもって画面に重ねられ、ジグソーパズルのピースのような存在感を帯び始める。色彩は、影にも光を感じさせ、風景のすべてに光が照射されるかのような抜け感を持つ。そうした色彩性をもつピースによって独特な絵画空間が創出されている。主題に関しては、「猫と暮らす日常」と作者は語るが、実際の作品では猫が中心とされていない。おそらくは猫を含む日常の些細なシーンの連続が彼女の今を生きるかけがえのなさであることを推察できるだろう。今後、主題に関して更なる整理を進めながら、それが独特の平面空間において展開されていくことを期待したい。

教授・大島 成己