卒業制作優秀作品集2021
彫刻学科
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- 三木 早百合
「__してる/よ」
技法・素材:ウレタンフォーム、樹脂、電子機器パーツ、フィギュア玩具、造花等
サイズ:H187×W125×D110cm
自己の内面に存在しているであろう“偶像”を形にする作品の制作・研究を行ってきた。自身のプライベートな思考や、切実な承認欲求などの、本来隠すか裏垢に吐き捨てるような感情、それらを逃したくない、改めて形に残したいのだ。私はその行為が、自身のワンルームの部屋を、公然に広げる行為のように感じている。2020年の世界的パンデミックによる自粛期間を経て、今まで自分とだけ向き合ってきたワンルームのなかに、自分ではない生き物(=他者)を求め、出会った。この作品では、他者の受容に困惑しつつ、不器用ながらに必死に接触を迫る自身の姿を作品にしたいと思った。その他者は、一切の言語が通用しなかった。私は、ただ伝えたい、と、願っているだけ。“他者”を思考することで、生物の欲望の素直さや、本能的な自衛の強さを改めて知った。そして、とても愛おしいと思ったのである。
担当教員によるコメント
コロナ・パンデミックで自粛を強いられた年度前半、作者は自宅ワンルームに閉じこもり、作品制作にもがき苦しんだ。そういった日々を過ごした後、強迫観念に近い制作意欲をしたため本作『__してる/よ』に着手した。毎日薄い皮膚のように身体を覆う私的思考や情報を引き剥がしては作品に付与していく。そんな行為の末、幾重にも重なった澱のようでなお、透明感を兼ね備えたブリコラージュ作品が成立した。作者は「切実な承認欲求や本来裏垢に吐き捨てるような感情もすべて逃したくない」と言う。それは、すべての細部に宿る言葉にならない痛みや歪みこそが、女性であることの不自由さや表層性、暴力的なほどの刹那性を語るとの確信ゆえであろうか。なんとしても今を定着したいという強い意志に貫かれた制作をする作者の、さらなる今後に期待する。
教授・笠原 恵実子