Casa albero

小澤 徳崇

作者によるコメント

私は人の心を彫刻したいと思っています。まだ、未熟でありますが、いつかそうできる日が来ることを願って、日々、制作しています。卒業制作では、塔を作りたいと思いました。その理由としては、私の卒業年度となった2020年がコロナウィルスの出現により、世界的に混乱の中にあったことが関係しています。私にはこの混乱の様子が、旧約聖書に出てくるバベルの塔の話に似ているように思えました。神に挑戦した人間たちが、神から怒りをかった所為で言語分裂がおこった時、人間たちはきっと、今の人々のように恐怖と不信感で一杯になっていたのだろうと私は想像しました。この大いなるうねりの中で、私たちが持つべき心構えを考えたく思い、自分が思うこの時代を象徴した塔を制作しました。

担当教員によるコメント

この作品は1本の樟から彫り出され、素材の塊りから彫り出していく基本的な彫刻の在りようを良く現しており粗削りではあるがスピード感のある表現が魅力となっている。作者は勢いのあるチェンソー捌きで樟の原木に大きなうねりのある螺旋状のフォルムと深いスリットのある矩形のフォルムをせめぎ合わせながら刻み込んで行く。そしてその深い彫り込みはそこに現れる光と影のコントラストにより明解ではっきりとしたフォルムを浮かび上がらせている。また、この作品は現実の空間に在りその姿が見る者の視線を誘い込み、そしてその全体を伝える為に見る者に歩き回る事を促しながら、彫刻が本来持っている空間との拮抗関係を見る者に強く感じさせる作品となっている。

教授・川越 悟