ROOM

服部 このみ

作者によるコメント

私は自身を取り巻く風景や物を、そこに何があるかではなく、どんな色や形があるかで捉えているようだ。
目に映る景色から色と形を抽出して、平等に平面的な構成要素として頭の中で描く。そうして重力を失った対象は布に乗せられるとシワができ、像が歪む。
この卒業制作は、室内にある物を色面として自由に描いて布にプリントすることで、身の回りの色と形を布の上で変換することについて自分自身が再考し、鑑賞者には部屋の中でその変化の違和感を体験してもらうことが目的である。

担当教員によるコメント

常日頃、服部さんは眼に映るモノを色彩と形に分解して認識するという。そして、造形要素となったモチーフ達は重力から解き放たれて軽々と布の表層に定着するのだとも述べている。なんと軽やかなイメージを発する布地達だろうか。今回は自室空間を構成する家具や衣類などをモチーフとした。彼女の日常の断片であるモノ達が自身の感性で色彩と形に分解されて布の表層にイメージ(夢想)として定着し、仮想の自室を再構成した。人間は住み慣れた家や空間を失うとアイデンティティーを散逸させられるともいわれる。現実として住み慣れた空間と、彼女の軽やかなドローイングで昇華された空間、それらを差異としたのが今回のテーマなのだろう。そこには、彼女自身の空間の詩学があるように思う。

教授・髙橋 正