mixture

松井 杏奈

作者によるコメント

自分の部屋を彩る為に貼った思い出の写真やお気に入りのポスターたち。
ごちゃごちゃしていてまとまりはないけれど、それぞれひとつひとつが私の生活に寄り添い、壁を見るだけで気分が明るくなる。そのような暮らしの空間を華やかにしてくれる布を目指して、写真やドローイングから得た色たちを抽象的な織の色に落とし込み自分の中の大切な記憶や想いをシルクスクリーンで表現した。
生活の中で、多くの時間を過ごす家という場所にこのタペストリーを飾ることで、日々を見守ってくれるような存在となってくれたら嬉しい。

担当教員によるコメント

布構造でみせる色彩には透明感があり、1枚のテキスタイルでありながら奥行きを感じます。極小の立体表現と言われる織物での色彩表現に、シルクスクリーンプリントという色彩表現を加えたことで生まれる色の響き合いが見る人を魅了します。日常を記録した写真やお気に入りのポスターをモチーフとしているのですが、物質としてのモチーフではなく思い出がまとう空気感をよく表現しています。やわらかで優しい印象の作品ですが、この作品には松井杏奈さんの強さを感じます。骨太なこだわりと気後れしない精神力なくしては生み出すことのできない作品です。貪欲に学び修得した力をもって自ら切り開く未来が、この作品の先に続いていることを感じます。

講師・辛島 綾