1:2

永田 綾乃

作者によるコメント

今まで成長してきた中でさまざまなカルチャーに触れてきた。その中でも特に映画が自分に与えてくれた影響は多大だ。悲しい時、嬉しい時、怒っている時、私は映画を観たくなる。映画の登場人物達が笑って泣いて、怒って、抱き合って。スクリーンの中の世界で巻き起こる出来事や感情に共感し、いつの間にか全く違う人生を歩んでいるはずの登場人物達に自分を重ねているのだ。映画が人生と重なる瞬間、そのシークエンスを切り取り自分のタッチで布のスクリーンに映し出す。数ある作品の中でも家族、または友人や恋人など他者との関わりを描いた16作品を選んだ。

担当教員によるコメント

映画を愛し心のよりどころとしてきた永田綾乃は特に人と人との関係を描いた16本の映画から思い出のシーンを抽出しそれを染色技法で表現した。映画のスクリーンに見立てた横長の布にフォトコラージュの手法でイメージを構成しそれを温かみのある独自のタッチで描きなおしている。中心に消失点を持たない画面は奥行を失い平面的な広がりを感じるものとなり、その構成と穏やかなタッチに落ち着いた色調が加わり、統一感のある特別な世界が感じられ、観るものを引きつける魅力的で優れた作品が出来上がった。技法的には染色技法の原点である描絵を思わせる方法をはじめ様々な技法を用いる。見た目以上に手間暇かかる作業の上に成り立っていることが細部を注意深く鑑賞することで伝わってきた。

教授・柏木 弘