彫刻学科
平成16年度入学試験

入学定員―30名

入学試験科目・配点・日程
 2月16日(月)
  国 語(100点)―10:00〜11:30
  外国語(100点)―12:00〜13:00
 2月17日(火)
  鉛筆デッサン(150点)―10:00〜16:10
  (12:30〜13:40は昼休み時間)
 2月18日(水)
  塑 造(150点)―10:00〜16:10
  (12:30〜13:40は昼休み時間)

実技問題

鉛筆デッサン(5時間)
 モデルの全身を描きなさい。
使用紙:M画用紙・木炭紙大

塑 造(5時間)
 手をモチーフにして、「空間」を表現しなさい。
注意
 ・与えられた用具、材料はすべて使用しなくてもよい。
使用:粘土(水粘土)

実技問題出題のねらい・意図

 彫刻は、主に立体の領域であり、現実世界への空間認識が強く求められます。本年の出題意図はその空間に対する感性の表出が主なねらいです。とかく彫刻の受験指導、あるいは採点ポイントというと、マッスやボリューム、構築といった旧来からの思考法が優先されてきました。しかし、現代の美術のおかれた状況、あるいは混迷する国際情勢をみると、たとえ入試といえども、いや入試だからこそ従来の価値観だけでは、とても指導、採点できないところまできていると言えるのかも知れません。とはいえ、限られた条件のなかで社会的なコンセンサスを得なければならないのもまた受験システムの宿命であり、使命でもあります。
 本年の出題内容は、ここ数年の傾向を踏襲し、対象の捉え方の「基礎」とされてきた部分も踏まえながら、受験生にとっては、若干、難題とも思えるテーマをあえて設け、技術や経験だけでなく、柔軟な思考や、多様な感性の表出、さらに、与えられたテーマに対し果敢に挑戦する意欲とを期待し、将来、作家として自立できる人材の確保を主眼としました。

実技問題採点のポイント

鉛筆デッサン
 人体のもつ有機的なフォルムと、球と方形による幾何形態との対比を、独自の感性により、いかに捉えるかがポイントとなるが、例年に比べ、デッサンのレベルはやや低調であった。その要因として、試験開始から比較的早い段階での対比感覚やバランスの把握に戸惑いが見られ、空間表現に苦慮していた点が挙げられる。高得点のデッサンはいずれも実態の描写は無論のこと、空間への認識が感じられた。その他、印象に残ったのは、旧来の人体比例重視のデッサンではなく、自己の印象をストレートに表現し、対象に肉迫した迫力のあるデッサンが数点みられた。それらは惜しくも、合格圏を逸したが、採点者側のコンセンサスの問題もあり、課題を残すものとなった。いずれにしても、若い感性による新鮮味のあるデッサンが今後、大いに期待される。

塑 造
 塑造は、前年の課題に付加課題として空間表現を課した。その背景にはやはり、実像だけではなく、ものとものとが創りだす「間」の感覚や創造性を試すねらいもあった。しかし、多くが出題内容を無視した、受験勉強持ち出し型の作例ばかりで課題に対するモチベーションの低さが目立った。若者らしい大胆な空間表現や、「手」以外のモチーフも少なく、昨年よりも造形に対して消極的な印象であった。よって、立体上のデッサンは多少劣っていても、課題に対する積極性が感じられた作品には好感がもたれた。手の構造や、肉づけも大切だが、訓練すれば誰でもできるテクニックに、個性が埋没してしまうのも、本末転倒である。ここでもやはり、デッサンの試験と同じような印象があり、課題に対し果敢に挑戦する意欲的な姿勢を今後期待したい。

入試科目の変更点について

 平成17年度の入試では、「鉛筆デッサン」が「デッサン(人物)」となり、鉛筆と木炭を選択できるようになります。よって得意な方を自由に選択して試験に望んでもらい、個々の能力を存分に発揮していただきたいと思います。(詳細は平成17年度学生募集要項を参照してください)