トが手掛けた客室で話題。蜷川実花さんによる一室は、まるごと蜷川さんの作品空間になっている。また、ギャラリーもあってクリエイターに開放的で、大黒屋と同様に多方面からアートを支える。こうした次世代育成や発表の場づくりは宿泊施設に限った話ではなく、新しい価値観を求める街や企業が絶えない。 芸術祭による大規模な町おこし やがて21世紀を迎えると、日本各地で芸術祭が盛んに行われるようになる。まさにパブリックアートの特性である、「その場ならではの表例を見てみよう。た。かつて付近に浄水場があったことから、池をベースに7つの大理石の彫刻が設置された。また、1991年に移転した東京都庁における関根伸夫さんの作品「水の神殿」と「空の台座」は、無機質なビル群の広場を安らぎの空間へと昇華させた。これらの作品には共通点がある。作品が設置される場所を意識し、その場ならではの表現であることだ。現在パブリックアートの担う役割が増しているのは、この特徴を生かしていることも大きい。 アートを施設の装飾に用いるのではなく、アートの存在そのものを施設の個性として打ち出すところが増えてきた。ここでは、宿泊施設の 栃木県の板室温泉大黒屋は、室町時代から続く老舗である。屋内外の至るところに現代美術家の菅木志雄さんの作品があり、敷地内に氏の個人美術館を置く。この老舗旅館と現代アートの融合という大胆な試みでみごと経営再建を果たし、メセナアワード2005で「アートスタイル経営賞」を受賞したことでも知られる。さらに若手アーティストの育成にも積極的だ。 一方、ホテル アンテルーム 京都はアーティス6菅木志雄(68年 油画卒業)│91年より設置開始 「保養とアートの宿」と銘打つ老舗 菅さんのみならず、この旅館は若手アーティストたちも熱心に支援し、その作品も随所に展示されている。[ホテル・京都]蜷川実花(97年 グラフィックデザイン卒業)│16年設置館内で展覧会も実施するホテル かつては学生寮だった建物を改修したホテルにはギャラリーもあり、館内に展示されているアート作品は購入も可。アートを経営の軸に据える新たな試み板室温泉大黒屋[温泉旅館・栃木]ホテル アンテルーム京都宿泊施設の概念を変えたアート
元のページ ../index.html#6