TAMABI NEWS 78号(ゲームクリエイター特集)|多摩美術大学
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ココから人材が巣立ったバンダイナムコスタジオ VA統括本部 VA第1開発本部 VA2部 VA3課 課長 東 毅之さん ▲ ゲーム開発はCG技術の向上とともに、常に最新の技術トレンドを取り入れる必要があり、そこには学生時代に培った基礎力が生きてきます。一時的な技術力ではなく、変化に対応できる柔軟性と基礎力が必要なのです。今、主流となっているスカルプトという3Dモデル制作手法は、感覚的に彫刻に近いのでは。絵画やデザインに限らず、幅広い学びが生かせる業界だと思います。広がるゲームの解釈、その体制構築が必要コロプラ 次世代部 西田明佳さん ▲ コロプラには、入社後3Dをはじめひと通りの技術を学ぶ教育プログラムがあり、ここで多摩美で培った基礎力を武器に技術を伸ばす人が大勢います。多方向から見る視点や思考の力、作品に向き合う忍耐力や洞察力、突っ込まれても前向きに受け止める強さと素直さ。そこには、ただ仕事に直結する人間ではなく“クリエイター”を育てようとする多摩美の方針を感じますし、まさにそういったデザイナーを求めています。セガゲームス オンラインコンテンツ事業部オンライン研究開発部 セクションマネージャー 中山雅晴さん(96年グラフィックデザイン卒) ▲ 在籍する多摩美の卒業生に学科を限らず共通するのは、確かな基礎デッサン力に基づく汎用性ですね。画力だけでなく、客観的視点を持ち、いずれはリーダーとして引っ張っていく素質があるかを重視し採用しています。さらに、野心が強く、自己投資を惜しまず、一方で協調性を持ち合わせた人こそこの業界で活躍できる人だと思いますし、そんな人を望んでいます。7(現・環境デザイン)学生時代、上野毛キャンパスで開かれた講座に参加したのがきっかけで3DCGの面白さに出合いました。当時まだ高価だったコンピュータが数十台導入され、それを使って3Dで表現できる領域は、私の想像をはるかに超えていました。その出合いがきっかけで、グループ会社である映像会社を経て、コーエー(現・コーエーテクモゲームス)に入社。複雑な機能が組み込まれた高度な画作り、ステージもキャラクターも全部コントロールして見たこともない世界が表現できるとあって、同僚と、「俺たちがやってるのって、ほぼ神に近い」みたいなことを言い合っていました(笑)。何かもうそれぐらい衝撃的だったんです。3Dのキャラクターは格好いいだけでなく、ゲームにおける役割がちゃんとビジュアルで表現されているのも魅力でした。役割と表現がガッチリハマっていると、そのゲームの世界観がすごく気持ちのいいものになるんです。客観性を持ち、誰が見ても納得させるデザインが大事という感覚は多摩美で養ったのですが、逆に意味を持たない表現では良いものになりません。例えば『三国志ロワイヤル』で、豪華さの違いを演出しようとした時は、キャラクターに施す金の装飾の産地に違いがあるという設定にすることで、説得力のあるデザインを追求しました。そうした客観性の一方、ゲームの面白い点は、主観や作家性を盛り込める部分なんです。客観と主観の両方を行き来して、主観的部分を強みにできるのがエンタメの醍醐味。その点で、ゲームはもっとも優れていると思うのです。DeNA入社後は、アプリゲーム開発に携わっていましたが、その後は組織の拡大に伴い、マネージャーとしてデザイン組織の強化に努めています。いま、ゲームの解釈はどんどん広がっています。eスポーツのようにライブ感が楽しめるものも誕生しました。DeNAのミッションは、「その人の記憶と歴史に残る体験をつくる」ことで、その手段の一つがゲーム。未来に向けて制作体制を構築し、整備を行うのが現在の私の任務です。新卒入社の人たちには「何かひとつ、理解を深めた職能を身に着けて下さい」と言っています。例えばキャラクターモデルを作る技術を掘り下げれば、そこに付随する動きについても分かってくるでしょう。理解を深めたい職能を見つけて、自分なりのプロダクトを世に出していってほしいですね。クリエイターを目指す後輩たちへ業界先駆けとなった多摩美の3DCG講座ここで語っている武安さんや、コナミデジタルエンタテインメント・亀井さん(P6)、トイディア・松田さん(P8)ら、今ゲーム業界で活躍している多くの人材が、90年代後半に多摩美の3DCG講座で学びました。「当時、業界に先駆けて3Dゲームの開発に取り組んでいたコーエーと多摩美とが、産学共同で取り組んだ夢のような講座でした。1台数百万円もする高価なパソコンで学び、ここから巣立った多くのゲームクリエイターが現在活躍しています(武安さん)」。当時は映画『トイ・ストーリー』やディズニーがフルCG作品で社会に衝撃を与え、新しい価値観が広まり始めた時代。まさに3Dアートの黎明期と言えるこの時、多摩美にコンピューターラボラトリーが設置され、ゲーム業界における新しい礎を築いたのです。武安利幸=卒業後、コーエー(現・コーエーテクモゲームス)に入社。07年より4年間、カナダ支社にて海外開発を経験する。12年DeNAに入社。ビジュアルオーナーとして『三国志ロワイヤル』のリリース・運用に携わる。『三国志ロワイヤル』キャラクターのラフ画。いくつものパターンに手直しが重ねられ、キャラクターが完成する(右図)ハイレベルな内容で定評のあるDeNAサマーインターンシップで指導にあたる武安さん。DeNA 武安 利幸さん 98年インテリアデザイン卒三国志ロワイヤルスマホゲーム黎明期からゲームに関わりデザイナーからマネージャーとなって組織づくり学生時代、3DCGの面白さに触れた衝撃仮想空間だからこそ納得させる客観性をマネージャー、アートディレクター

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