TAMABI NEWS 80号(世界と戦うチカラ<グローバル>特集)|多摩美術大学
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4『en Kitchen 円キッチン』 「“何も捨てない”こと」をモットーとした、自然素材で再生可能な食器類。無駄を作らない生活を生み出すとともに、地元の人と島を訪れる外国人の絆を深め、そこから広がるコミュニケーションを提案しています。アメリカの名門大学アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン(ACCD)との国際協働教育プロジェクト「パシフィック・リム」は、2006年に始まりました。日米相互に3ヵ月間滞在しながら世界各地を視察し、環境問題を考えたり伝統文化などの体験を経て課題や潜在的価値を見つけ、デザイン提案までを行うものです。企業や政府関係者からの関心も高く、さまざまな取り組みを行ってきました。ルの提案です。また、直島を訪れた時に感じた地元の人たちの強いコミュニティを基点に、ここで働く人と訪れる人とを“食”という“縁”から結び付けたい。さらにその先に広がるコミュニケーションを目指しています(アレックスさん)」。プラスチックごみの問題が世界中で議論されている今、アートを目的に、「さまざまな国から偏りなく、大勢の外国人観光客が訪れる直島だからこそ意味がある」と感じている二人。当初は話せなかった英語も、必要に迫られ自然と身についたと言う森田さんは、「残る課題はいかに大量生産を可能にするかですが、実現すれば必ずプラスチックごみは減少します。来年は3年に1度の瀬戸内国際芸術祭の年。私たちの提案は主催者の方にも注目いただいているそうですが、ぜひこれを実現させ、自分たちの提案を直島から世界に発信していきたいですね」と、今後の夢を語りました。今年度のテーマは「Taste Making Tokyo」。未来の食事や食文化を見越した革新的なデザインを生み出そうというもので、デザインする領域は、食事をする環境をはじめ、使用する器や道具、行事や作法にまで及びます。9月1日より約2週間、情報収集のために実施された視察(フィールドトリップ)からスタートし、今回アメリカから参加した12名と多摩美の学生10名とが2人1組のチームとなって、課題に取り組みました。─10月23日に八王子キャンパスで開催された中間発表会には、アートセンターからDavid Mocarski学部長も来日。22名10チームの学生は、英語と日本語で作成したポスターや映像資料を用いながら、この2ヶ月間で取り組んできた成果を発表しました。発表後の講評会では、日米両国の教員陣や学生が、作品を前に意見を交わしました。この日の評価を受け、学生たちは12月5日の最終発表に向けてさらなる改善に励んでいました。発表だけで終わらせず、実用化させ、 プラスチックごみを減らしたい世界を代表する現代アーティストや建築家による作品・建造物があり、「瀬戸内国際芸術祭」の舞台の一つとしても知られる直島。開催時には世界中から多くのアートファンが訪れます。森田さんとアレックスさん(JIMENEZさんの愛称)はこのプロジェクトで直島を訪れ、芸術祭の期間中、観光客が購入する弁当やファストフードなどから大量のプラスチックごみが発生することに着目しました。直島ではもともと、古い空き家に現代アートを足すことで新たな魅力を生み出すといった試みを積極的に実践しています。古いものを生かそうとする一方でごみの問題を抱える背景から、「再生可能な食器」の発想が生まれました。「食材を余すことなく感謝していただくという日本の精進料理の考え方に着想を得て、“何も捨てない”ことをテーマにしました。ごみを出さない生活スタイ参加学生=プロダクトデザイン2年 森田留奈さん、 アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン(以下 ACCD)プロダクトデザイン JIMENEZ Alejandroさん●アメリカ● アートセンターとの協働│プラスチックごみの課題に挑戦      ペアを組んでの感想は? ☞ プロジェクト開始当初、参加学生同士でポートフォリオを見せ合う機会がありました。それを見て、二人ともリサイクルへの興味と、持続可能なプロダクトのための素材に対するこだわりが同じであることを知り、意気投合。「考え方が似ているので、私たちの協働はスムーズでした。プロジェクトを通してこうした仲間と出会えたことは、幸運だと思います(森田さん)」。日米の学生がペアで、3ヵ月間課題解決や価値の創出に取り組む国際プロジェクトアートセンターから学部長も来日。日本語と英語で行われた中間発表会直島の観光客が使う食器を、プラスチックから自然素材に海外名門大学との協働や

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