TAMABI NEWS 80号(世界と戦うチカラ<グローバル>特集)|多摩美術大学
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5『Reveal Taste 心満たす時』 チームパートナーはCOPPENRATH Skylerさん(ACCD・プロダクトデザイン)。中間発表では、「食後の心を満たす和菓子」を包むための和紙を提案。パッケージ作りには、テキスタイルデザイン専攻の教員からの協力を得て、紙漉きから行いました(最終発表時は『HITOKAKE ひとかけ』に改題)。プロダクトデザイン 和田達也教授=1981年多摩美術大学プロダクトデザイン卒業。同年、日立製作所デザイン研究センター入社。1992年株式会社ジープラス設立。2001年より日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞審査委員。2008年より多摩美術大学生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻・学科長に就任。「この12年間の経験によって、海外の学生が滞在し協働するために必要な工程がノウハウとして培われている」と語る、和田先生。協働だけが目的だけでなく、学生同士が親睦を深め、互いの文化やアイデンティティを理解する工程も、プロジェクト推進に欠かせない要素としてデザインされています。『Woven Stories 「Sai」』 チームパートナーはMathew Simonさん(ACCD・プロダクトデザイン)。タイ・チェンマイの伝統文化を世界に広く発信し未来につなぐことを目的に、地元の木彫りや機織り職人の仕事から着想を得て、現代的な造形とコンパクトに梱包可能な形状にデザインしました。当日受賞を知った津野田さんは現場でスピーチを考えることに。目的は異文化を学ぶということこのプロジェクトの目的は、異文化を学ぶということです。アメリカのトップスクールの学生たちがどんな覚悟で取り組んでいるか、その文化や精神面の強さを早い段階で知ることは、学生にとって大きな糧となるでしょう。例えば、アメリカ人にとっては相手に伝わりやすいプレゼンなんて当たり前で、勝つためのプレゼンを行います。その圧倒的強さに、学生たちは刺激を受けます。今後どんな道に進もうと、活躍するフィールドが海外となったときに、この「英語作るということも、いい挑戦になると思ったのです。一人でやるなら好き勝手にできますが、協働となると、相手を受け入れつつ自ら主張することも必要です。言葉はもちろん、スケッチしたり作って見せたり。説得する力の必要性を学べたことが大きかったです(津野田さん)」。プロジェクト終了後に、応募を提案したのはパートナーのSimonさん。そうした後押しもあり、世界への挑戦というプロジェクト以上の成果を得た例となります。による協働」というプロジェクトでの経験とノウハウを生かせることを目指しています。どんな環境にも対応できる真の自立を促す日米の学生同士マンツーマンの取り組みなので、逃げ場がありません。相手を理解し協力し合わないと、先に進まない。いい化学反応を起こすこともあれば、■藤を生む場合もある。ですが、まさにそれを学んでほしいのです。社会に出たら必ず体験するであろうことを、学生のうちに経験できる貴重な場だと思います。専攻に関わらず、すべての学生に海外との協働の門戸は開かれています。「普段とは違ったいろんな表現の形を探すため、異分野に飛び込んでみようと思ったのが参加へのきっかけです(三澤さん)」。独学で英会話を習得していた三澤さんですが、言葉以上の壁を感じました。「私は、アイデアは出せてもその先のデザイン的なプロセスが分かりません。また、パートナーとのコミュニケーションギャップが思わぬ壁となりました。“感動”を付加したい私多摩美に限らず、日本の学生は精神的な自立に欠けています。国際人である前に、まずは自ら考え、伝え、動く力、つまり「生きる力」を持つ必要があります。このプロジェクトを通して刺激を受け合いながら、どんな環境でも自信を持って戦える力を養ってくれることを望んでいます。とは異なる合理的な判断、マイペースでつかみづらい行動など、前提から違うんです」。しかしこのような経験は、将来どんな業界や立場でも体験することだと考え直し、デザインの部分はパートナーに頼り、紙漉きや自身が得意とする表現の部分を担当するなど、お互いの良さを引き出す工夫で前に進めました。自分を客観視することが大きな糧となったと語る三澤さんのように、学生はそれぞれ多様な目的で挑戦しています。2016年度の協働プロジェクトで津野田さんらが発表した作品『Sai』が、IDSA(アメリカ・インダストリアル・デザイナー協会)主催のIDEA(インターナショナル・デザイン・エクセレンス賞)学生部門にて金賞と特別審査員賞を受賞しました。「もともと日本の伝統工芸を国際製品市場につなげることに興味があり、タイの伝統工芸が題材のプロジェクトでしたが、伝統工芸であることには変わりはないので、参加しました。英語を通じて人と作品を参加学生=プロダクトデザイン4年 津野田あゆりさん参加学生=油画3年 三澤紅音さん担当教員インタビュー プロダクトデザイン 和田達也教授●アメリカ● アートセンターとの協働│タイの伝統工芸をアップデート      ●アメリカ● アートセンターとの協働│和菓子を引き立たせる新しいパッケージを提案   技術や知識にとどまらず、精神面においても常に世界水準を意識する姿勢を育んでいます。世界を相手にした時に必要となる精神面の強さや取り組みの姿勢を、早い段階で知る大切さ2016年に制作した椅子が全米コンペ学生部門で受賞油画の学生も、日米協働のデザイン課題に挑戦世界水準を自分の中にセットする交流世界と戦える人材を育成するために、海外の名門美術大学との取り組みを通じて、

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