「無いものは作る。 それは今も昔も変わらない」10は表現したいことに対して素材がないから自分で作るしかなかっただけ。作りたいという思いが、どれだけ強いか。こういう表現をしないと、居ても立ってもいられないから作る。彫刻の素材にポリマーコンクリートを使ったのも、非常に強度の高いコンクリートなので細く作っても折れたりしない。表現力を無限に広げられると思ったからなんです。コンピューターを作るとかコンピューターグラフィックスを始めたのも、自分の表現方法として必要だったから。人に教わるのが嫌いだから全部、独学です。『音声感情認識ST』を開発したのも、コンピューターに人間の感情を認識させる必要があったけれど、世の中に存在しないから自分で作ってしまったわけで。今は、この技術を応用して人間よりも道徳的なロボットを作るための研究をしています」 多摩美時代の修行のような経験が 今の自分をつくっている 欲しいものは自分で作る。光吉さんがアーティストとして、また自分の生き方として決定付けられたのは彫刻学科での課題制作だったという。「当時は、面白い先生がいてね。電動工具や機械があるのに『お前は江戸時代の技術で彫れ』と言われて、手仕事をやらされたんです。毎日、朝4時ぐらいからノミを叩いて焼き入れする。まず道具から作って彫っていたんです。最初はまどろっこしいけれど、道具が良ければ手作業の方が、気迫のある断面とかができるので、結果的に良い作品ができ上がる。楽をしたって何もできやしないってことを体にしみ込ませてくれた。先生は、そういう教育を与えてくれた。修行に近かったけれど、あの経験をしたから今があると思っています。後輩たちには『お前たちがやるんだよ』とぜひ伝えたいですね。悟り世代には悟り世代の表現があるし、最後は自分でやるしかないわけです。でも、これだけは言えます。『好きなことを仕事にすることは、好きなことを諦めること』にもなる。本当に好きなことだけをやりたいのであれば、お金に関係なくやりだすからです。どちらの道を選ぶにせよ、自己責任であることだけは事実。とにかく、諦めないことが大切だと思います」東京大学 大学院工学系研究科特任准教授光吉 俊二88年彫刻卒ポリマーコンクリートを素材に作られた『BONDAGE HIP』。上=光吉さんの研究室内に置かれた『Pepper』。その横にはトレーニング用のウエイトマシンが設置されている。中=光吉さんの卒業制作作品『KARUMA』。自ら作った道具で彫ることにより、気迫ある断面が生み出された。下=法務省赤レンガ庁舎の外装・屋根飾り窓、正門のデザインの制作も、光吉さんが手掛けた。Mitsuyoshi Shunji 彫刻家として活躍したのち、次世代コンピューター開発、通信インフラ研究、CG映像制作、都市計画及び建築設計、物理・数学・心理学、人工知能学会など幅広い分野で独自の成果を上げ、注目を集めている。元スタンフォード大学バイオロボティクス研究所Visting Scientist、元慶應義塾大学主席研究員。全ては自分の表現方法として つながっている 大学卒業後、高強度を持つ新素材ポリマーコンクリートを使い、ダイナミックな彫刻作品を次々と発表し、数々の賞を受賞。その後、インターネットに関心を持ち、独学でコンピューター関連のハードウエアやソフトウエアを開発すると、CG映像制作にも乗り出す。とどまることを知らない探究心は、音声から人間の喜怒哀楽の感情を認識する技術『ST』の開発へと進ませた。この技術は、感情認識ヒューマノイドロボット『Pepper』にも搭載されている。現在は、東京大学でロボットに人工自我を持たせるための研究を続けている。略歴を書き並べていると、とても一人の人物のものとは思えないが、光吉さんにとっては必然ともいえる自然な流れだった。「自分でも経歴だけを見たら、絶対うそだろうと思いますよ(笑)。でも、全然違うジャンルであっても自分の中ではつながっているんですよ。全て彫刻からコンピューター開発、彫刻からコンピューター開発、そして今、ロボットに人工自我をそして今、ロボットに人工自我を持たせる技術に挑戦持たせる技術に挑戦
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