エイベックスグループエンタメコイン株式会社代表取締役有田 雄三8デザイン思考によるプロダクト開発を 学んだ経験が生かされている 吃音症(言葉が円滑に話せない疾病、または障害のこと)の二次障害として併発してしまう社交不安障害の治癒、吃音症の症状軽減を目的に開発されたVR(バーチャルリアリティ)アプリ『VRbal(VRバル)』。福岡さんの企画と熱意に賛同した友人たちが開発メンバーとして参加し、制作されたものである。「私の役割は主に二つでした。一つ目は吃音の当事者としてチームのリーダーを務めたこと。二つ目はユーザーテストやユーザーインタビューを担当しました。吃音当事者にインタビューを繰り返したことでアメリカの吃音者の多くが、雇用・就職問題を抱えていることが分かり、課題を明確に定めることができたとともにVRのアイデアを思いつきました。今回、実際のユーザーが抱えている問題の本質を突き止め、当事者に寄り添うプロダクトを開発できたのは、デザイナーの考え方や思考の仕方でプロダクト開発を学んだ経験が生きたのだと思っています。また、ビジュアルデザイナーとしてのスキルは、構想段階のプロトタイプ制作において非常に役立ちました」 サービスデザインゼミで得た 知識やスキルが、発想力の原点 多摩美在学中、顧客やユーザーに豊かな経験を提供することを目的に、広いテーマで、サービスやコンテンツのデザインを学ぶサービスデザインゼミで得た知識やスキルが、自身の活動の原点であり、今につながっていると福岡さんは言う。「異分野との交流や企業との協働をはじめ、自分で問題や課題を見いだし、顧客やユーザーがより良いサービスを得られるよう包括的に問題を解決するための訓練ができたのは非常に有意義でした。情報デザイン学科で“美しいものづくりをする”ことがデザインであるという固定観念から抜け出す思考を学べたことは私にとって大きな財産です。それによって、課題解決のための手段と目的が逆転してしまったり、アートとデザインの定義のはざまで揺れ動いていた自分の軸を定めることができたと思っています」 今回、『エンタメコイン』開発でUI/UX設計を進めるにあたり真っ先に統合デザインの学生に参画してもらったのですが、こちらに忖度せず自由に意見を出して欲しいとお願いすると実に面白いアイデアが出てくるんですよ。日頃からリアルな課題と向き合っているので、ユーザー視点のアイデアだけで終わらない。エンタメ性も踏まえ『もっとこうすると楽しくなる』というプラスアルファの意見が出てくる。今、ビジネスの現場、時代が求めているのは、本質を見抜く力、考える力、感じ取る力、アウトプットする力だと思うんです。それはまさに多摩美の教育と合致するのではないかと実感しました。『エンタメコイン』を発展させるために、今後もそうした力を持つ多摩美の学生を、積極的に採用していきたいと考えています」デザイナー福岡 由夏14年情報デザイン卒緊張を強いられる面接やプレゼンのシーン(写真左)と、人工知能と会話しながら緊張を緩和するシーン(写真右)を交互に繰り返す。実際に言語聴覚士が行うセラピーをVRで疑似体験。Fukuoka Yuka 卒業後、Yahoo! JAPANへ就職。同時に東京大学情報学環に研究生として入学。その後、ニューヨークのアートスクール「School of Visual Arts」のMasterプログラムに入学し、2018年5月に修了。現在、ニューヨークを拠点にデザイナーとして活躍中。エイベックスがフィンテック領域(金融×技術)に参入し、立ち上げた『エンタメコイン』。 好きなアーティストやスポーツ選手などを応援するファンの熱量を、ブロックチェーンを導入したシステムによって可視化し、より熱心に応援してくれたファンにはお金では買えない体験価値で感謝を返す新サービス『エンタメコイン』。エイベックスで音楽プロデューサーをしていた頃から多摩美の学生が持つ能力に注目してきたという有田社長が、最先端技術を駆使して立ち上げたサービスだ。 「2016年に統合デザイン1期生の学生たちと話をする機会を得たのですが、彼らが受けている授業の内容、それに対する彼らのアイデアにも感銘を受けました。アート思考やデザインシンキングを用いて社会課題への解決アプローチを考えている実践的な視点が素晴らしく、次年度はご縁あってエイベックスに入社してくれる統合デザインの学生も現れました。 することが私にとってのデザインです」最先先端の技術で新規サービスを創造する企業からの評価課題解決に対する多摩美の学生の課題解決に対する多摩美の学生の発想力やアイデアに驚いた発想力やアイデアに驚いた吃音の克服を目指すVRアプリ吃音の克服を目指すVRアプリ 『VRbal』を 『VRbal』をアメリカで開発アメリカで開発「人々が抱えている課題を解決
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