アートを流通させるアートを流通させる新しい仕組みを新しい仕組みをブロックチェーンで構築ブロックチェーンで構築「多摩美の授業や 恩師の言葉の数々が 自分の行動に 多大な影響を与えた」9トや徒弟制度をつくった。一つの作品を世に広めるときに、その環境も含めてつくることは自然なことなのかもしれません。今、誰もが新しいことを模索しなければいけない時代を迎えています。この時代にルネサンスみたいなことが起きても不思議ではない。個人的にはクリエイトの究極は作品の創造だけではなく、それを世に広めるための『システム』の構築だと以前から考えていて、『start-bahn』はその具現化といえるかもしれませんね」アートマーケット活性化のヒントは、 作家として関わり始めたインターネット 多摩美を卒業後、アーティスト活動を開始した施井さんは「インターネット時代のアート」をテーマに数々の作品を発表。自身が掲げたテーマは、どのような発想から生まれたのだろうか。「これからどうしようかと不安になっていたとき、最初に考えたのが、自分はアーティストとして究極的にどんなことをすればいいのかってこと。過去を見ると、時代背景やテクノロジーの進歩に合わせて歴史的なアーティストが出てきている。その相関関係は分かっていたので、今の時代に合ったものをつくり、最適解ができれば意味のある作品になる。もちろん歴史に残るものと意味のあるものはイコールではないと思いますが、一つの答えではあるなと。それでインターネットをテーマにしようと決めたんです。当初はインターネットやテクノロジーをイメージさせる作品づくりを行っていましたが、それと同時に考えたのがアートのインフラ作りでした。インターネットには民主化の要素がある。例えば、ユーチューブの世界では、中学生が世界的なアーティストになることだってできる。プロフェッショナルばかりだった領域に素人が入り込める。そこが一つのインターネット的な要素だと思うんです。これまでアートマーケットはアート界のヒエラルキーの頂点でしか成立していませんでしたが、インターネットを用いることでその下の部分を活性化できるのではないか、そのための環境づくりをしたいという思いに変わっていきましたね」発想のきっかけは在学中に 受講した椹木野衣教授の授業 アーティストでありながら、インターネットを駆使したアートのインフラ構築と運営を行う会社を起業した施井さん。今振り返ると、その発想に至った影響は、在学中に受講した椹木教授の「20世紀美術論」の授業にあるという。「過去にもアートマーケットを日本に根付かせようとした人たちがいましたが、なかなかうまくいかなかった。その理由はテクノロジーに弱かった点にあると思うんです。だったら自分が、彼らがやろうとしていたことを継承したい。そう思わせてくれたのが、椹木先生の授業。シュヴァル(理想宮)やヘンリー・ダーガーなど、アウトサイダーが人生をかけて作った大きな建造物や物語を紹介した授業があって、人生をかけて大きな作品をつくり上げることに興味を持ったんです。今の自分に大きな影響を与えてくれたと感じています。ですから、作家から何か別の道に進んだように見えるかもしれませんが、自分の中では全てがつながっていると感じています」 スタートバーン代表取締役施井 泰平01年油画卒東京大学内にあるスタートバーン株式会社のオフィスの壁には、施井さんが手掛けた作品(書籍の背表紙をコラージュしたオブジェ)を展示。Shii Taihei 現代美術家であり、スタートバーン株式会社代表取締役。2007年〜2011年まで東京藝術大学非常勤講師を務め、2014年、東京大学大学院在学中に大学構内にてスタートバーン株式会社を設立。『startbahn』が設計・構築するアートブロックチェーンネットワークは、世界中のアートサービスをつなぐことを目的とし、作品の来歴・流通マネジメントを可能にしている。また、「ABN証明書」により、売買の履歴だけではなく、美術館での展示、貸出、鑑定といった、作品の評価と信頼性に関わるさまざまな履歴を連続的に記録できる。クリエイトの究極は、作品を世に広める 「システム」を作ること 「アートマーケットを活性化して拡大させるとともに作家の経済活動をサポートする」をコンセプトに、インターネットを使ってアート作品の売買を行うオンライン・サイト『startbahn(スタートバーン)』を設立。2018年にはブロックチェーンネットワークを通じて外部サービスとも連携できる仕組みを採用することで、アート作品を簡単かつ安心して売買できる新たなシステムをスタートさせた。電通やUTEC(東京大学エッジキャピタル/東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、株式会社SXキャピタルから約3億円の資金調達を行うなど、そのビジネスの仕組みと将来性に各方面から注目が集まっている。現代美術家であり起業家でもある施井さんは「究極の目標はアート全体を復興すること」と語る。「ギャラリーシステムや、今のアートマーケットをつくったのはピカソだといわれているのですが、千利休にしても自分の茶器を売るためのマーケッ
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