TAMABI NEWS 82号(アニメ-ションの可能性特集)|多摩美術大学
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ジャンルを超えて伝わる強さアニメーションの課題制作で 気付いた自分の適性 “異色のアートディレクター”を育んだ  入社後、数年間はアートディレクターのアシスタントとして下積みを経験。その後、アニメーションを用いた数々の動画広告が社内外で評価され、藤田さんは“異色のアートディレクター”としての地位を確立していった。 「自分の絵は、当然ながらアニメーション業界で働くプロの方には全くかないません。ただ、広告アニメのキャラクターデザインやNHK Eテレで放送中の『オトッペ』のような物語世界を構築する際、広告会社で培った企画力やデザイン力を生かせば、『面白い』と多くの方が感じてくれることに気付きました。さまざまなお題に対して『どうすればアイデアが強く伝わるか』をその都度、多様にそして柔軟にデザインするのが自分の存在意義なのかも、とも感じています。そう考えられるようになったバックボーンは大学時代の学びにあると思うんですね。課題に対して、学生がさまざまな手法の作品を提出しても、それぞれの良さを肯定して認めてもらえる文化でしたから。表現の“多様性”の大切さを教授の方々から教えていただいたのが、大学で得た一番大きな学びだったと思っています」自由度の高い多摩美での学び6 広告のみならずテレビ番組やWEBメディアなど幅広いジャンルでアニメーションを駆使した作品を発表し、これまでにない新たなアートディレクターとして注目を集めている藤田純平さん。イラストレーターやデザイナーとして活躍している先輩たちへの憧れからグラフィックデザイン学科に入ったが、すぐに高い壁に直面したという。 「絵にしてもデザインにしても、同級生たちの作品のレベルの高さに『どうしたらいいのか…』と危機感を覚えていました。そんな時に課題で作ったアニメーション作品が同級生に『いいね』と言われ、教授からも褒められたんです。作っていてすごく楽しかったですし、それまで大人にあまり褒められたことがなかったので、これは僕に向いているかもしれないと思いました(笑)。しかし、その後アルバイト先のアニメ制作会社先で、作家として活動されているプロの仕事を見て、また挫折しました(笑)。自分との画力の差があまりにも大きく、断念せざるを得ませんでしたね。ただ、ずっと広告にも興味があったので、アニメーションを使った広告表現なら自分にも何かできるのではないかと思って、博報堂を受けようと考えたんです」 Fujita Junpei アートディレクター。大学卒業後、博報堂に入社。主な仕事にNHK Eテレ『オトッペ』の楽曲作詞・キャラクターデザイン、漫画『BIBLIOMANIA』の脚本など。文化庁メディア芸術祭 アニメ部門/マンガ部門入賞・入選。ACC CM FESTIVAL金賞・個人賞受賞。キャラクター開発業務を中心に、幅広いジャンルで活動中。三井のリハウス『みんなの声鉛筆』。 住まい・不動産に関するさまざまな悩みを、アニメーションとピクシレーションを融合させた独特のタッチで分かりやすく表現したWEB CMシリーズ。 CL=三井不動産リアルティNHK Eテレ『オトッペ』。『オトッペ』の世界はアニメにとどまらず、公式アプリを使っていろいろな音を録音し、その音と連動して出現するキャラクターを集めるという楽しみ方もできる。「身の回りの音に耳を傾け、“聴察力”を育む」という次世代コンテンツ。 SACLA『未来光子 播磨サクラ』。『未来光子 播磨サクラ』は、X線レーザー施設「SACLA」をPRする目的で、同施設を主人公『播磨サクラ』として擬人化。SFアニメなどに展開し、世界最先端の施設が持つ魅力を分かりやすく紹介した。 CL=国立研究開発法人 理化学研究所 放射光科学研究センター藤田純平05年グラフィックデザイン卒 「広告会社で培った アイデアと デザインを駆使した アニメーション制作が 自分ならではの強み」

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