TAMABI NEWS 84号(技術が開放する個性)|多摩美術大学
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ゲーム、ネット、生命科学、AI…さまざまな環境を自分の想像力と結び付け、アートとテクノロジーを行き来しながら世に問いかけるアーティストがいます。5「自然の監視、自然の生成」(2019) 撮影=山本糾 写真提供=青森公立大学国際芸術センター青森Amemiya Yosuke 現代美術家。2011年に渡欧し、2013年にオランダのサンドベルグ・インスティテュート修士課程修了。現在はドイツのベルリンを拠点にアーティスト活動を行っている。雨宮さんのFacebookで、プロフィール写真として使用されている、パフォーマンス作品の一場面。撮影=夏原 新(Shin Natsuhara)Mihara Soichiro 山口情報芸術センターのInterLab勤務を経て作家活動を本格化させる。2011年より、テクノロジーと社会の関係性を考察するために「空白」をテーマにしたプロジェクトを国内外で展開中。京都府在住。AIのテクノロジーはすでに広大な『自然』。それゆえに『不可避』であり、今後さらにそれらは加速するはずです。ただ、現時点でりんご彫刻を制作するとなると、僕の頭の中で行うデータベースの構築作業や手作業でつくりだすりんごの肌き理めなど、全てにおいてAIよりも僕のほうが処理速度や解像度は高いと思っています。しかし、近い将来、AIとインターネットと3Dプリン 「この分野の画期的な点は、科学者が行うような遺伝子組み換え技術や生殖医療など、これまで個人の想像力が入る余地のなかった先端的な生命科学領域に対して、芸術が実践的に切り込めたことです。私は表現にメディア・テクノロジーをさまざまに活用していますが、常に意識しているのは、その技術や素材、現象が、『何らかの普遍性を考える方法であり得るのか』ということ。気になった現象や原理を調べて、ユニークな装置を1から設計することもたびたび学生時代に培った 体験に重きを置く姿勢 音、泡、苔、土、微生物など自然現象から生命までを素材に、メディア・テクノロジーを用いた作品を発表し続ける三原さん。その作品は生物学的側面が強いことから「バイオ・アート」と呼ばれることもある。なお、在学中はサウンド・アートやネット・アートの分野に興味を持ち、制作活動をしていた。バイオ・アートという領域を認識したのは卒業後のことだという。人間にとってテクノロジーは 回避できない『自然』 彫刻、ドローイング、ビデオインスタレーション、パフォーマンスなど多彩な手法を用いて、「境界」や「普遍性」をテーマに作品を制作している雨宮さん。今秋、青森県立美術館で開催された『いのち耕す場所』展における、最新作『普遍的なりんごを探してみる』プロジェクトは、最先端テクノロジーであるAIを用いた、これまでにない新たな取り組みに挑んだものだ。 「この20年間ぐらいを考えると、昔の人が『自然』に関わることが『不可避』であったのと同じぐらい、僕らの生活においてインターネットやです。ただ、自分の制作作品がバイオ・アートと呼ばれることには少し恐縮しています」 学生時代には今のような仕事をすることは想像もしていなかったという三原さん。ただ、当時も今も続けていることは、「本物を見ること」。そしてそのために、現場に足を運ぶこと。体験に重きを置き、制作に結び付ける姿勢は、多摩美での学生時代に培われたものだと話してくれた。ターの組み合わせのほうが、あっという間に追い越していくはずです。その時に人類の未来について、より面白がれる準備をしておきたいというのが、今回AIを使おうと思った最初の動機でした」  作品テーマによって手法を変える雨宮さんにとって、AIという最先端テクノロジーの活用は、未知なる「自然」の中で行う「実験」であり、新たな表現を模索する「挑戦」に違いない。AI技術AI技術を採用することで作品の本質的なテーマに迫る雨宮 庸介99年油画卒業油画専攻非常勤講師三原 聡一郎04年情報デザイン卒業メディア・テクノロジーテクノロジーを駆使して、生命活動や自然現象をアートとして提示てアートに変える

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