TAMABI NEWS 84号(技術が開放する個性)|多摩美術大学
8/16

ジャンルを越境した クリエイティビティを発揮8長谷川さんが手掛けたイオン銀行の家計簿アプリ『カケイブ』。「かんたんでべんり」がコンセプト。キャラクターと共に「暮らしのヒント」を添えることで、親しみやすさが感じられる設計を心掛けた。『カルティエ』のエキシビション用インタラクティブコンテンツ。手を近づけると構造物が反応し、映像コンテンツが投影され、さまざまな表情を見せる仕掛けが施されている。※UI設計…UI(ユーザーインターフェイス)とは、WEBサイトをパソコン、スマホやタブレットで見るときに、画面上に現れるフォントやデザインなどの情報のこと。ユーザーの使い勝手などを考えて行われるデザインをUI設計という。 デザインとエンジニアリングの両分野に精通した多才なプロフェッショナルが、企業や組織から依頼されたさまざまなプロジェクトに対し、ジャンルを越境して要望を実現していくデザイン・イノベーション・ファーム『Takram』。同社プロトタイピングエンジニアの成田さん、デザインエンジニアの長谷川さんも、それぞれの得意領域にとどまらない活躍を見せている。 「Takramの事業領域は4つあるのですが、その中で僕が主に関わっているのは『Pro-duct/Software/Service』という領域で、UI設計※をメインに担当しています。しかし、ただ作るだけではありません。イオン銀行の案件では複雑なお金の管理に対し、どのような体験を提供すべきか具体的なプランを作成してご提案し、形にしていきました。家計簿アプリ『カケイブ』の開発は、その一つです。また、最近はスタートアップ企業の立ち上げからブランディングを行っていく仕事に関わる機会もありました。デジタルのデザイン技術を使った支援方法を考えるだけではなく、他の専門スタッフと一緒にビジネスモデル作りのディスカッションに参加することも。この会社では、自分の得意ジャンルだけではなく、他のジャンルや領域にも越境して、自分のフィールドを広げていくことができます」(長谷川さん) 一方の成田さんも、一つの案件の中で複数の役割を担っているという。 「最新の案件では、ハイジュエリーブランド『カルティエ』のエキシビション用にインタラクティブコンテンツの制作を担当しました。石のような構造物を作り、来場者が手を近づけると、それに反応して、プロジェクションマッピングされた映像コンテンツを鑑賞できるというものです。この構造物のデザインとプロトタイピング、内部のエンジニアリングを行いました。さらに、別の案件では写真用カメラの交換レンズのプロダクトデザインという、まったく違うこともやっているんです。この会社に入ってからプロダクトデザインを学んだのですが、まさにデザインの越境ですね。まだまだ越境する領域はたくさんあると思うので、今後もトライしていきたいと思っています」(成田さん)多様な価値観の中で、自由なものづくり をした経験が現在に生きている 共に情報デザイン学科出身だが、大学でのどのような学びが、今に生かされているのだろうか。 「僕の場合、多摩美のさまざまな分野の非常勤講師の方々との出会いが大きく影響していると感じています。デバイスエンジニアリングに目覚めたり、越境性を学んだのもそうです。いま、いろいろな領域のスペシャリストとコミュニケーションをしながら仕事をしていますが、多摩美で多様な価値観を持った人たちと語り合いながらものを作った経験が生きていると感じます」(成田さん) 千葉大学工学部のデザイン学科を卒業後、多摩美に編入した長谷川さんはまた違った角度から大学での学びを語る。 「驚いたのは設備やものづくりの環境が、すごく整っていたことでした。なのに、なぜみんな利用しないんだろうと思って(笑)。また、多摩美では何かに縛られてものを考える必要がなく、アウトプットも自由。技術だけではなく、ものづくりに必要なより多くのものを手に入れられたと思っています」(長谷川さん)成田 達哉09年情報デザイン卒業情報デザインコース非常勤講師Narita Tatsuya プロトタイピングエンジニア/デザイナー。2014年よりTakramに参加。ハードウェアの開発やプロトタイピングに加え、インダストリアル・デザインも手掛ける。主な受賞歴に「アルスエレクトロニカ賞」(2009年、オーストリア)など。長谷川 昇平11年情報デザイン卒業Hasegawa Shohei 09年に千葉大学工学部を卒業後、多摩美に3年次編入。デザインエンジニア。博報堂I-STUDIOにてWEBやアプリなどのデザイン領域をメインとしたデザインに携わり、2015年よりTakramに参加。UI/UXのデザインを中心に手掛ける。世界を牽引する企業で挑戦するクリエTakramイオン銀行のアプリ開発から『カルティエ』のエキシビションまでジャンルを超えた力で企業の要望を実現に導く

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る