TAMABI NEWS 86号(2020年度受賞ラッシュ特集)|多摩美術大学
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2020年度 受賞ラッシュ特集田中 清代95年油画卒業『くろいの』(偕成社)『水は海に向かって流れる』(講談社)家族や男女の機微を柔らかな絵と言葉で表現する独自性が評価された。10清新な才能をもつマンガ家に贈られる賞 日本のマンガ文化の発展に大きな役割を果たした手塚治虫氏の業績を記念し、マンガ文化の健全な発展に寄与することを目的に1997年に創設された。新生賞は1年間に国内で発表されたマンガの中から、斬新な表現、画期的なテーマなど清新な才能の作者に贈られる。学生時代には「自分の無力さ」を味わうことも大切 マンガの制作においては、わかりやすさを一番に心がけています。編集担当の方に誤解されたところなどは、説明過多なくらいに描き直します。受賞する前も今も、おそらく未来も変わらないのは「死に物狂いで創作すること」です。生活は楽になっても制作は楽にならないというのがわかりました。大学時代に、よく先生に「他人に興味を持て」と言われました。以来、なるべく自分の内側よりも外の世界に興味を持つようにしたことは、創作活動にもプラスの影響を与えてくれました。学生の時には視野を広げ、少し無理なことにも挑戦してみてください。思いきり自分の無力さを味わうのも良いことだと思います。子供たちに読んでほしい一冊として昨年出版された絵本1,165冊から選出 絵本芸術の普及と発展に寄与することを目的に、1年間に日本で出版された絵本の中から優秀作品に贈られる『日本絵本賞』。今年度は全国学校図書館協議会選定委員会によって選定された1,165冊から30点が最終候補に選ばれ、田中清代さん作絵による『くろいの』が大賞に輝いた。美術作品は「見る人」とのコミュニケーションなしでは成り立たない 16年ぶりに作絵を手がけた『くろいの』は、全64ページすべてをモノクロームの銅版画で仕上げた作品です。銅版画は制作にとても時間がかかるのですが、濃淡を駆使した奥行きのある空間を描きたいとずっと思っていたので、子どもの誕生を機に、その思いのすべてを凝縮しようと挑みました。女性として、とりわけ母として、子育てをしながら作家活動を続けることの大変さを感じることもありましたが、今回の受賞が私の人生において大きな自信と達成感を与えてくれました。アワードに応募することに不安や迷いは誰にでもあると思います。でも、一歩踏み出すことにより、作品の評価だけでなく社会や人とのつながりが生まれ、自分自身を振り返るきっかけにもなります。美術作品は「見る人」とのコミュニケーションなしでは成り立たない、と私は考えています。これから作家を目指す方々が、作品を通して世界とつながり、たくさんの刺激と発見と喜びを実感してほしいと思います。田島 列島07年映像演劇卒業『第25回 日本絵本賞』95年油画卒業の田中清代さんが大賞を受賞『第24回 手塚治虫文化賞』 07年映像演劇卒業の田島列島さんが新生賞を受賞

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