TAMABI NEWS 88号(持続可能な社会の実現に向けて)|多摩美術大学
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アウトドア用には小型の水発電機を作り、ユニットを取り付けることで虫よけや風を送るファンを制作するなど多目的な活用ができる製品の研究を進めています。アート担当の学生に関しては、水発電そのものの良さや楽しさ、美しさを知ってもらえるような作品制作を行っています」人々の生活がある限り、アートやデザインは豊かさや喜びを提供し続ける 同社の技術に学生ならではの視点やデザインの魅力を加えることで、企業側に新たなビジョンを提供することを目指しているとのこと。 「先人の優れた技術をリスペクトした上で、どうしたらより生活の中で使ってもらえるかを考え、その技術が持つ価値を無限大にまで広げていくのがデザインの役割だと学生たちには伝えています」 環境に配慮された製品であることが当然の選択基準になってきている今、持続可能な社会の実現に向けたアート・デザインの可能性について、中田先生はどのように考えているのでしょうか。 「人々に豊かさや喜びを提供するのがアート・デザインの役割の一つなので、世の中がどれだけ変わろうとも人々の生活がある限り、その可能性がなくなることはありません。時代を先読みしてアートとデザインができることは何かを考えて、どんな状況もさりげなくしなやかに対応できる社会をつくることが理想です。SDGsの目標も『気がついたら達成していた』というのが良いですね」プロダクトデザイン専攻中田希佳 教授SDGs、ESG時代に多摩美ができること10月26日に行われたE.F.E株式会社との産学連携プロジェクト中間プレゼンの様子マグネシウム・酸素・塩水の化学反応によって発電する画期的な特許技術E.F.E株式会社が開発した水発電機「ENECTRON(エネクトロン)」。学生たちはこの原理を応用して、超小型の発電機や六角形の発電機など3種のデザイン提案に取り組んでいる09TAMABINEWS技術を使うシーンや場所を設定することで新しいニーズが生まれる E.F.E株式会社が2018年に開発した水発電機「ENECTRON(エネクトロン)」は、水と塩とマグネシウムの化学反応を利用して発電するシステムで、約2.5リットルの塩水で約80時間の電力供給ができます。有害物質を使用していないため、触媒のプレートを交換することで再利用が可能となり、災害時などの簡易電力としても活用できる安全性の高い発電技術です。 「使うシーンや場所、ユーザーを限定した商品開発を行えば新しいニーズが生まれ、世界的な展開も期待できると感じました。そこで3人の学生にそれぞれ異なるテーマのデザインを提案してもらうことにしました」 1つ目は地球上のあらゆる「暮らし」をテーマに奥地での農村生活や水上生活など電力インフラが未発達な国での展開を意識した製品開発、2つ目は「遊ぶ」をテーマとしたアウトドア商品のブランディングと製品提案、3つ目はプロモーションデザインの提案として水発電技術を用いたアート作品の制作です。通常の産学連携以上に研究要素が多いことから、4年生と大学院生が卒業・修了制作レベルの長期プロジェクトとして取り組んでいます。 「電力供給が未発達な国では簡易インフラとして利用できるよう、縦にも横にも置ける六角形の発電機や水に浮かべて使える照明など研究しています。水発電の発電原理プロダクトデザイン専攻の中田希佳教授のプロジェクトでは現在、有害物質を排出しない画期的な「水発電技術」を開発したE.F.E株式会社との産学共同研究に取り組んでいます。中田先生に本プロジェクトの概要と持続可能な社会の実現に向けたアート・デザインの可能性について伺いました。持続可能な社会の実現に向けてCASE.4技術を生かしたアプローチ  Technological approach水発電技術の価値を無限大に広げる力

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