PROGRAM TDUの講義で扱うテーマは国内や国外、社会システムや個人の創作活動と多領域に跨るものの、いずれもデザインという創作活動について考え、学ぶという点で通底しています。その意味で、デザインやクリエイションの根幹である「気付き、考え、つくり、広める」というプロセスをデザイナーがいかに深化させているかという視点を持つことは重要です。 そこで、日々さまざまな実験を通して自らの作品世界や知覚を創出しているデザイナーによる講義を紹介。彼らはいかにして、新たなデザインの地点を開拓していっているのでしょうか。これらの講義では、領域横断的な水平方向への広がりに対し、深化を続けるデザインの修練について具体的な作品事例をもとに学ぶことができます。11菊池諒 AUTOMATION DESIGNZeBrand Inc. Chief Executive Offi cer&Form代表/デザイナー。スイスのキアッソ市立美術館のアートディレクター、南スイス州立大学SUPSIのデザイン・コラボレーターを経て、2012年、デザインスタジオ&Formを設立。現在、ファッションはバイオやデジタルといった領域と融合しつつあります。現実のファッションに対する3Dファッション、両者の間にあるARファッションなど空間的にも混ざり合う中で、各領域を行き来しつなぐデザインが求められています。講義ではその最新の事例を紹介。多摩美術大学、横浜国立大学YCCS、東京工業大学EDP 非常勤講師。ソーシャルデザイン・ファーム、株式会社cocoroé代表。Royal College of Art グラフィックデザイン修士号取得。川崎和也 MULTIDIMENSIONAL DESIGNSynfl ux株式会社代表取締役CEO、スペキュラティヴ・ファッションデザイナー、デザインリサーチャー情報空間と実空間をまたぐ「複数の現実」のためのファッションとは?丸山新 VISUAL COMMUNICATION DESIGN田中美帆 SOCIAL DESIGN共創で社会をつなぐ、ソーシャルデザインとは?行動するデザインとは?デザイナーの仕事とは、制作物を通じて人の行動や判断のもととなる「手がかり」をデザインすることだといえます。この、人の行動や判断(=人の心)を対象とした「Cognitive Design」による、「手がかり」のデザインの試みを紹介します。菅俊一 COGNITIVE DESIGN多摩美術大学統合デザイン学科准教授、コグニティブデザイナー行動や判断の手がかりはデザインが可能なのか?あらゆる場面で、AIやオートメーション化による人の労力の代替が起きています。ではデザインの領域におけるオートメーション化とはどのようなものでしょうか? 講義では最新の事例を交えながら、オートメーション化できるデザインとそうでないデザインを考えます。また、コンピュータを強力なデザインの素材として使いこなしながら、人が得意とする創造性を発揮し組み合わせる「オートメーションデザイン」の必要性を提唱します。クリエイティブコーダー、甲南女子大学文学部メディア表現学科講師。短いコードを書く習慣を続けながら、プログラミングを日々の生活や文化と結びつける活動として「デイリーコーディング」を提唱、実践。株式会社オーバーキャスト代表。デザイン思想系メディア「ÉKRITS / エクリ」の発行人/編集長。専門はエクスペリエンスデザイン。東洋美術学校クリエイティブデザイン科 エクスペリエンスデザイン講師。デザインがオートメーション化される時、人間は何をすべきか?何のために、誰のためにコードを書くのか?岡崎氏がコマ撮りの手法で制作する実験動画「STUDY」は、作品制作における「完成」の概念を無くしたとき、そこに何が立ち現れるかを確かめる試みです。講義ではコマ撮りの過程を、自身の表現ではなく「もの」の動きと世界の構造との関係性を観察し、つなげる行為と位置づけました。そして、アイデアを派生させながらひたすら「蓄積」する試みを「Accumulate Design」と名付け、その本質を考えます。岡崎智弘 ACCUMULATE DESIGNSWIMMING代表、多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師、グラフィックデザイナー完成を目指さないデザインとは何か? デザイン領域におけるもうひとつの大きな流れとして、多様な方向へ進展するテクノロジーに対して人々がいかに向き合っていくべきか、いかに共生することができるかという問題意識があります。 AIやNFT、メタバースにみられるように、人間の自然な身体や能力がテクノロジーと融合し、拡張していく未来は目前にあります。すでにAI技術によってデザイナーの脳の働きを代替し、ブランドコンセプトや世界観を創出するといった取り組みを行う海外のスタートアップ企業も出現し、人間の仕事が機械に取って代わられるという危機感が高まっています。また、デザインの対象も実空間の「モノ」からAR空間やNFTなどへ多次元的な広がりを見せています。そうした近い将来に、デザイナーや私たち人間にできることとは一体何でしょうか? 実際に先端的な取り組みを行っている講師を招き、今後求められるデザイン思考のあり方を探りました。高尾俊介 CREATIVE-CODING大林寛 EXPERIENCE DESIGNこれまでもこれからも変わらないデザインとは?実験を繰り返し「深化」させていく、デザインの重要な態度のひとつAI、NFT、メタバースー進展する「テクノロジー」とどう向き合うか
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