「Tama Design University(TDU)」は、2021年12月の1ヶ月間に限り東京ミッドタウン・デザインハブに出現したバーチャルな美術大学です。ここでは「デザインとは何か」を問い直し、再定義する多彩な講義を毎日実施。会場に設置された仮設の教室あるいはオンライン配信によって、誰もが無料で受講できるようにしました。「Tama Design University」がグッドデザイン賞を受賞08TUBディレクター/統合デザイン学科 永井一史教授 多摩美術大学がこうした講義を広く一般に向けて発信する背景には、デザインの知識を仕事の手法や経営などに活かしたいとする社会環境に対応する狙いがありました。デザイン的な創造性や美意識を社会にどう実装し得るか――この問いを社会に投げかけ、思考することが美術大学としての役割でもあります。 日本デザイン振興会(JDP)をはじめ、デザインに関する国内の主要機関が運営する東京・六本木のスペース「東京ミッドタウン・デザインハブ」。2021年4月、この場所にデザインとアートの持つ創造性と美意識を社会とつなぐ場として多摩美術大学が「TUB(Tama Art University Bureau)」を開設しました。美術館やギャラリー、企業オフィスが集結し、新たな価値創造が活発に行われる六本木の場所性も活かしながら、「まじわる・うみだす・ひらく」をコンセプトに多彩な教育プログラムや展覧会を開催しています。 コンセプトの背景にあるのは、先行きが不透明な「変化の時代」にあって、物事の本質を今一度問い直し、新しいものを生み出していこうとする社会的な要請です。これに、多摩美術大学が長い歴史の中で蓄積してきたデザインとアートの知、そして美意識が応えられるのではないか̶̶。この問題意識のもと、八王子・上野毛キャンパスでは出会うことの グッドデザイン賞審査委員による評価の中でも、専業のデザイナーに限らず幅広い人がデザインについて知り、活用し、未来を切り開いていくことへの期待感が語られています。その上で、TDUが受講条件や費用の垣根をなくし、開かれた学びの場として多様なコミュニケーションを可能にした点が高く評価されました。2022年度グッドデザイン賞を受賞したバーチャル大学の「Tama Design University(TDU)」。デザインの役割が拡張する時代に、オンラインとリアルのハイブリッドによって学びの場を設け、デザインを問い直し、デザイン意識の高い人材を増やす取り組みが評価されました。その拠点となった「Tama Art University Bureau(TUB)」のディレクターで、TDU開催の指揮も務めた永井一史教授の話をもとに活動を振り返ります。我々はこれからの世界をどうデザインできるのか?六本木という場からデザインとアートの本質を考える社会とつながり 新たな広がりを創る場
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