「問いを立てる」習慣を多摩美の授業で身につけた 「スーパークリエータ」が多摩美術大学を目指した理由小原さんの卒業制作。キーワードを入力すると、サーチエンジンから検索されたウェブサイトにあるイメージを拾い上げて表示する“ハードウエアウェブブラウザ” 「WWWRB」情報デザイン 1年三橋優希さん最初からターゲットユーザーが決まっていたわけではなく、「こんなのがあったらいいね」から始まったhidaneの最終的なコンセプトは「楽しくカジュアルなブレインストーミング」。新商品の企画や学校の授業などでも活用されている09横浜DeNAベイスターズのWebサイト制作にも携わるどういうものかメンバーと徹底的に議論しました。まずユーザーの体験のストーリーをつくります。どういう人がどういうときにこのサービスを使うのか──。例えば、女子大生が横浜みなとみらいでパンケーキを食べたいと思っている。そこにどんなサービスがあれば、新しい体験になるかを考えます。その結果、スマホ上のアプリに「パンケーキ食べたい」と音声入力すると周辺のおすすめ店とクーポンが表示され、自動運転車が送迎を担うという「やりたいこと」をシームレスで実現するサービスのアイデアに行き着いたのです。 ここにおけるUIとは、スマホアプリの画面や操作性にあたる部分で、これを考えるのがUIデザイナーの仕事。一方、UXとはこのサービスの背景にあたるもので、企画からコンセプト策定、コンテンツや機能の要件選定など、この新しい体験を実現するためのすべてを担うのがUXデザイナーの仕事です。 博報堂アイ・スタジオでアートディレクター、UXデザイナーを経験した後、現職のポジションに就きました。現在は、ヘルスケアやコミュニケーション、AIによる課題解決など、さまざまな分野のUI/UXデザインに携わっています。この仕事の面白さは「新しい普通」を生み出せること。技術が進化するなかで、人々に「新しい普通」になるような体験や価値が提供できるプロダクトを、自社のチ 経産省所管の情報処理推進機構が実施している「未踏IT人材発掘・育成事業」で、事業修了者のうち特に卓越した能力を持った者が認定される「スーパークリエータ」に情報デザイン1年の三橋優希さんが選ばれました。「チャット型インタフェースを用いた集団発想法支援ツールの開発」(Webアプリケーション「hidane」の開発)に取り組み、採択された36名から18名のスーパークリエータの一人として認定されました。高2の冬に友人と二人でアイデアを出し2022年の2月にリリースし、もうすぐユーザーは2万人。「絵を描くことや物を横浜DeNAベイスターズの公式Webサイト UI/UXデザイナーに求められるのは、バイアスを外して、何でも体験してみる雑食性のようなものだと思っています。例えば、『Easy Ride』の開発では、「車は移動するもの」というバイアスを外して、「そもそも人はなぜ移動するのか」「移動とは何か」という問いを立てる。そこから「人はやりたいことを実現するために移動する」という結論が導き出され、それを実現するサービスとは何かという本質的な議論につながるわけです。そういう意味では、UI/UXデザイナーには、特定のデザインスキルに加えて、社会や経済のことを幅広く知りたいという知的好奇心も必要だと思いますね。つくることが好きで、その延長でつくりたいものに合わせてプログラムを覚えていきました」 自分がつくったもので他の人を笑顔にしたいという三橋さん。「人に使ってもらう、人の生活を変えていくようなものは単に技術が凄いとか、見た目が凄いだけだと使ってもらえない。笑顔になってもらうには体験のデザインについて学ぶことが必要で、それが多摩美の情報デザインでした。画面上だけでない場所で情報を伝えたり、人の体験をつくったり、人の心を動かしたり、いろいろな表現を試せ、何でもつくれるところが魅力です」 私は、この「問いを立てる」習慣を情報デームで作れるのがIT企業でデザイナーとして働く醍醐味だと思っています。横浜DeNAベイスターズのWebサイト制作にも携わりましたが、ファンの皆様にどのような体験をインターネットから提供できるかを考えるのは常ザイン学科のフィールドワークで学びました。私が在籍していたメディア芸術コースには、メディアアートの現場を見に行って、気づいたことについて学生同士でディスカッションをする授業があったんです。そこで、食わず嫌いをせずに何でも体験して、問いを立てることで、やっとイメージを具現化できるようになることを学んだ気がします。に楽しいものでした。これからのUI/UXデザインは、「やりたいことを実現する」から「なりたい自分になる」というレイヤーに上がっていくと思います。どうしたら自分をもっと好きになれるか、どうしたら自分の人生、生き方をより肯定できるか──。そんな問いに、テクノロジーを駆使して応えていくのが、次のUI/UXデザインの課題になるのではないでしょうか。結局、デザインもアートも「人間とは何か?」という究極の問いが根源にあると思っています。私も仕事を通して「人間」について探求することで、時代に求められるデザインを生み出していきたいです。幼い頃から絵を描くのが好きでモノづくりに興味があった幅広い表現を学ぶことでアウトプットの幅も広げたいDX・NFT時代の キャリアを考える時代は「やりたいことを叶える」から「なりたい自分になる」に向かっていく
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