TAMABI NEWS 93号(突き抜ける力)|多摩美術大学
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第6回(03年プロダクトデザイン卒)(19年プロダクトデザイン卒)10メーカー写真フィルムで培った独自技術を進化させながら、時代を捉えた事業領域でさまざまな製品やサービスを世の中に提供する。企業風土に深く根付いた「NEVER STOP」のマインドから、ヘルスケアやマテリアルズなど、近年は事業変革でも確かな実績を残している。 富士フイルムの事業には、大きく3つの柱があります。予防・診断・治療に関わるヘルスケアに、スマートフォンやタッチパネルに使われている材料や、機能性フィルム、データストレージ用磁器テープなどを扱うマテリアルズ。そして、カメラやレンズを扱うイメージングです。デザインセンターでは3つの事業それぞれにデザインの面からアプローチしています。製品やサービスが世に出る過程の下流だけでなく、構想段階の上流から関与しているのがデザインセンターの大きな特徴です。 化粧品ブランドの「アスタリフト」、ミラーレスデジタルカメラの「Xシリーズ」、近年の大ヒット作である「instax」など、富士フイルムの主力製品の多くが多摩美の卒業生のデザインによるものです。活躍している卒業生に共通するのが、抜きん出たプレゼンテーション能力の高さ。プロダクトデザイン専攻では、学生の作品を教授が日替わりでチェックします。それゆえ学生は多角的な視点が獲得でき、美に対する柔軟性のようなものが育まれるのではないでしょうか。造形美や機能美、所作の美など、美を知覚する総合力とそれを言語化して表現していく力を持ったデザイナーは、これからも社会で求められていくはずです。 プロダクトデザインに憧れるようになったのは、深澤直人先生がデザインした「インフォバー」がきっかけでした。画期的なデザインの携帯電話に衝撃を受け、これをデザインした人と同じ大学で学びたいと思い、多摩美のプロダクトデザイン専攻に進学しました。 多摩美の授業のなかでも、特に印象的だったのが、安次富隆先生に課された「アイデアデベロップメント」という課題です。ひとつのテーマが与えられて、学生全員でそれを議論するというもの。例えば「ハガキに1本の直線を引きなさい」というシンプルな課題に対して、約60人の学生が考えたアイデアが集まります。いかに多角的なアイデアを持ち、幅広い選択肢からどれに絞るか。これは現在の仕事にも通底します。プロダクトデザインの現場では、一案だけ出して採用されるということはまずありません。幅広くたくさんのアイデアを展開し、デザイン案を絞り込んでいきます。アイデア展開とセレクションの重要性を学べたことは、学生時代の大きな財産だと思っています。(12年プロダクトデザイン卒)デザインセンターデザインマネージャーデザインセンターチーフデザイナー 今は「instax」というインスタントカメラ<チェキ>のシリーズとデジタルカメラを主に担当しています。スマートフォン用プリンターの「instax mini Link 2」という製品では「写真をつくることを楽しむ」というコンセプトを設計するところから参加し、機能も提案してデザインに落とし込みました。AR(拡張現実)エフェクトを重ね合わせて空間に絵や文字を描く空間描画機能を搭載しただけでなく、音や振動などユーザーの五感に訴えるような機能を持たせています。 今後は自分が提案してデザインをするだけでなく、サポートすることにも挑戦したいです。後輩へのアドバイスを通してアウトプットされていくものに興味を持っています。 入社して4年目になりますが、1年目の終盤には実際に販売される製品のデザインをしていました。最初に担当したのは、亀井さんの製品のフォーマット違いにあたる「instax Link WIDE」です。ワイドサイズのチェキをプリントできる製品で、機能が決まっていない段階からアイデアを出していきました。家で使うシーンが増えることを想定し、持ち運べるストラップに加えてスタンドが付いた2wayスタイルを提案。ライティングにも遊び心を持たせて3色から選べるようにしています。形や機能に先駆けてコンセプトやターゲットを考えるところからデザイナーが関われることに、新人ながら大きなやりがいを感じました。 2年目には超望遠ズームレンズを担当しています。レンズは光学的な設計制約を守り、デザインする必要があります。美しいバランス、絞りリングの操作性、ボタンの大きさなどを考え、予算内で質感を出すために塗料の調合にもこだわりました。自分の趣味趣向とのギャップがある製品なので、デザイナーとして製品の世界観に入り込んでいくことに苦労しましたが、それで鍛えられたように思います。 どんな仕事にもいえるかもしれませんが、プロダクトデザインには納期が存在します。限られた時間のなかで妥協することなく、自分が納得するまで追求し続けなければいけません。それは多摩美のプロダクトデザイン専攻の授業を通して磨かれた姿勢のように思います。優秀な同期に囲まれて、課題に順位がつけられる環境下で、誰にも負けないという強い気持ちを持って授業に参加していました。デザイナーにとって粘り強さはとても重要な素質です。多摩美で授業や課題としっかり向き合い、仲間と切磋琢磨した経験は将来に活きるはずなので、後輩の皆さんには4年間を大切にすごしてもらいたいと思います。デザインセンターインスタントカメラの「instax」など主力製品の構想段階から関わる酒井真之さん亀井敬太さん会田侑香里さん富士フイルム企業の人事担当者・卒業生に聞く多摩美への期待と実績

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