TAMABI NEWS 93号(突き抜ける力)|多摩美術大学
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04shiseido art egg賞、TERRADA ART AWARD寺瀬由紀賞、VOCA賞を受賞自分にとって当たり前のドローイングが評価され重要な表現だと気づく描き続ける環境をつくり出そうと公募プログラムに応募を重ねた教養の授業で学んだことが今も表現に奥行きをもたらしてくれる 幼い頃から絵描きになる未来しか想像したことがありませんでしたが、焦ったのは大学3年生のときです。絵を自由に描いて生きていくためにはどうしたらいいんだろうと考えて、『CAF ART AWARD』や『ART IN THE OFFICE』、『shiseido art egg』といった公募プログラムに応募してみたんです。 特に得るものが大きかったのは『shiseido art egg賞』を受賞し、アートギャラリーで初めて個展を開くことができた経験です。ドローイング作品のみで展示を構成したのもそのときが初めて。一般的にはドローイングは作品制作の過程にあるもの・前段階のものという認識が強いようで、それ自体をメインの表現手段にしていることを珍しく思われたのが私にとっては驚きでした。自分の表現の中でいかにドローイングが重要なもので、今まで自然に選び取っていたものだったのか。そのことを見つめ直す機会になったと同時に、無意識や自然さを内包しながら表現を続けていくことが、自分に合っているのかもしれないと考えるようにもなりました。 2021年の『TERRADA ART AWARD』も同じく個展形式の発表があり、そこでは床をピンク色に染め、ペインティングやネオン管、針金作品を一堂に集めて展示しました。空間全体をひとつの絵画として見立てるような展示は私にとって新しい挑戦で、それは潤沢な製作費を提供してもらえるこのような機会だからこそ実現できたことだと思っています。 多摩美で学んだことでは、文化人類学や文学、心理学といった教養の授業が強く印象に残っています。深く勉強してみると、そこで得た知識や思考方法が、実技の方に影響を及ぼすことがあるのが面白いところです。 私は当初、「食べること」に興味がありました。食べてお腹がいっぱいになると思考が鈍ったり眠くなったりして、自分の意志に反して身体が変わっていくように感じる。また、食べるということは体内に外部のものを取左:「all same brain」(撮影:山中慎太郎(Qsyum!)、 中2点:川内さんの卒業制作「qualia man」と「qualia woman」、右上:「shiseido art egg賞」受賞時の個展「SHISEIDO Art Egg vol.9: Go down the throat」(撮影:加藤健)、右下:寺田倉庫にて開催された「TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展」(撮影:山中慎太郎(Qsyum!)り込む行為で、身体が外部のもので構成されていく。食に向き合うと、そうした身体の内と外、自己と他者の曖昧さという問題を突きつけられるんです。そうした思考を表現へと発展させる過程で、私はフランスの文化人類学者、レヴィ=ストロースの神話研究などにイメージを重ねることがあります。一見して離れたところにある考え方を経由することで、表現に奥行きがもたらされる。教養の授業で学んだことが今も生きています。 学生時代には、自分が一番生き生きできる場所を見つけてほしいです。教養の授業を受ける以外にも、その人の性格に合った過ごし方があるはず。そしてその場所で、自分が納得のいくものをつくってください。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻を卒業後、同大学大学院を修了。「身体」という根源的なテーマを原点に、肉体的・心理的な相互関係や、自己や他者の曖昧な関係性などを作品のモチーフとして制作。大学在学中にshiseido art egg賞(2015)、卒業後にTERRADA ART AWARD寺瀬由紀賞(21)、VOCA賞(22)を受賞。アーティスト15年油画卒業川内理香子KAWAUCHI Rikako

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