07突き抜ける力ギャラリストやキュレーターはどんなアーティストに注目するのか?様式的な価値観を飛び越えていくラディカルさを持った「何かを変えてくれる期待感」を持たせてくれる作家株式会社NYAW代表取締役/キュレーター山峰潤也型にはまらないメディウムで勝負している人の覚悟に惹かれる他者との対話を重ねブレない自分でいることが重要自ら個展を開催したことで作品販売だけでなく壁画の仕事もKeeenueさんの卒業制作葉が響いていたからだと思います。 田名網先生のアシスタントを辞めて独立したのを機に、個展をするようになります。知名度も予算もなかったので、フィーリングの合う空間に自ら持ち込みました。最初の個展はバーでしたが、反響は今一歩。コンセプトが曖昧だったと反省し、コーヒースタンドで開催した2回目の個展では、タッチを絞って私なりの世界観を打ち出そうと心がけました。大きな一枚の絵を分割するようにした展示です。アート関係の業界人が来る場所では 新人アーティストを発掘する場として、私が審査員を担当するアートフェアや大学の講評会、制作展などがあります。こうした機会を通して思うのは、ある種のコミュニティに接続することで創作のモチベーションや切迫感を持ち続ける姿勢が大事だということです。特定のコミュニティに限らず、同時代的な意識を持つ競争相手や作品を見せ合える相手がいることが重要なのであり、私が注目する人の多くは、そうした状況に身を置くことで成長を続けていると感じます。 私自身は「何かを変えてくれる期待感」を持たせてくれるアーティストに惹かれるところがあります。それは様式的な価値観を飛び越えていくラPROFILEキュレーターとして、これまでに東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館現代美術センターに勤務したのち、ANB Tokyoのディレクターを勤める。その後、株式会社NYAWを設立し、アートに関わるコンサル、事業組成などを行うほか、展覧会やイベントの企画運営などに携わる。ない一方、カルチャー好きのお客が多いお店だったこともあり、手応えは十分。作品を販売するだけでなく、個展をきっかけにShake Shackの店舗に壁画を描く仕事をいただくなど、活動の幅が広がるターニングポイントになりました。 今では壁画制作が活動の軸のひとつになっています。昔からストリートアートが好きでしたし、作品が大きいことで伝わるかっこよさがある気がします。浪人時代だったか大学1、2年のころだったでしょうか。26歳ぐらいまでに「ラフォーレ原宿の“広告”をやる」という目標を紙にメモしていました。隣接するABC-MARTの店舗とのコラボレーションという限りなく近い形で実現し、感慨深いものがありました。Nikeの店舗やFacebookのオフィスなど、世界的な知名度のクライアントとのコラボレーションも少しずつ増えています。 今後は、展示や作品制作など、海外での活動をもっと増やしたいです。2月には遊びなのですがシンガポールで描いてきたりしました。ギャラリーからお話をいただくのはディカルさを持ち、メディアを問わずに表現できる人。タブロー中心のアートマーケットの中で、それ以外のメディウムで勝負することは非常にタフです。それでも型にはまらないメディアの魅力に取り憑かれ、その中で勝負している人には一定の覚悟を感じますね。 もうひとつ、アーティストにとって重要なのが「他者との対話」「自分との対話」であり、自分の中で練ったものを表現としてきちんと外に出すことです。「他者との対話」というのは、世界中でアートが生み出してきたダイナミズムに触れることでもあります。アートは西洋を中心に発達し、アメリカの資本主義と接続して一気に巨大化しました。アートにはそれだけの力があり、さまざまな民族・国籍の人々が生きていく上で、必死に声を上げるためのツールにもなっています。しかし、その切実な声は日本にいてはなかなか届いてこない。だからこそ、世界中でアートが持つ力の底と広さを目の当たりにし、圧倒される体験をしてほしいのです。それは“アートにできること”の上限を高く持つことにもつながります。 一方、他者や世界と相対化する中で、自らの表現を喪失してしまうことがあります。そうならないために重要なのは、自分にできること・できないことを受け入れ、それをどう更新させていくか――対話を重ね、ブレない自分でいることです。突き抜けていると感じるアーティストには、こうした「他者世界」と「自分自身」の均衡が取れている人が多いのだと思います。ありがたいですが、フィーリングが合う空間を自分で探すほうが性に合うかもしれません。振り返ってみると、学生時代も自分から動いて、作品を見てもらえる機会を作り出そうとしていました。覚悟を決めればなんとかなるでしょうから、あのころのような行動力を取り戻したいと思っています。ABC-MART GRAND STAGE HARAJUKUのアートワークNike Store Harajukuのアートワーク
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