II KNOSHTABaku09アニメ「オッドタクシー」で「文化庁メディア芸術祭新人賞」受賞卒業制作で表現テーマが明確になり「オッドタクシー」の世界観につながる突き抜ける力自分の評価に固執せず作品を人に見てもらうことを学ぶ自分の手で長編アニメを作りたい積極的に企画書を提出した左:テレビアニメーション「オッドタクシー 」のメインビジュアル、右上:「オッドタクシー 」のキャラクター設定画像、右下:「オッドタクシー 」のコンセプトアート ©P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ木下さんの卒業制作「INDOOR」 情報デザイン学科メディア芸術コースでは、インスタレーションやプログラミングなどの授業を通じ、幅広い制作技法を修得しました。そのなかでも特に映像分野におもしろさを感じ、3年次以降はアニメーションの制作に力を入れるように。もともとイラストは描いていたのですが、動きが加わるアニメにおいては、カット割りやアングルによって、作品を観た人に伝わる印象が大きく変わります。その奥深さに惹かれ、世界中の名作映画などを観て勉強を重ねました。大学生活で印象に残っているのは、講評の時間です。あるとき、私はコメディ色の強いアニメ作品を用意していたのですが、自信がなかったので提出をためらっていました。しかし、勇気を出して発表してみると、意外にも周囲からの反応がよかったのです。この経験から、自分の評価に固執せず、作品を人に観てもらうことの重要さを学びました。 卒業制作では、「インドア」という短編アニメ作品を発表。ほとんど1年間を費やして制作に打ち込みました。作品の内容は、部屋のなかに閉じこもっていた主人公が外側の世界の価値を認識し、精神的な閉鎖から脱却していくというものでした。「主人公が閉鎖的な環境を打破して成長する」という自分の表現したいテーマが明確になったという意味において、「オッドタクシー」に与えた影響も大きかったと思います。また、この作品がきっかけでP.I.C.S.の仕事を手伝うようになったという点でも、キャリアにおけるターニングポイントになりました。 大学を卒業し、P.I.C.S.の手伝いを始めましたが、自分の手で長編アニメをつくりたい という思いを実現するべく、「オッドタクシー」の原型となる企画書を提出していました。ここからかなり長い年月がかかったのですが、先輩のプロデューサーやアニメ会社の方に協力していただき、監督とキャラクターデザインを担当することになりました。 初めての長編アニメ監督作品ということで苦労もありましたが、アニメが放送されると国内のみならず海外からもコメントをいただき、すべての努力が報われるようなやりがいを感じました。経験が少ないなかでテレビアニメの監督を担当したことは、自分にとってかなり高いハードルだったと思っています。しかし、そこで試行錯誤しながら逃げ出さずに挑戦したことは、間違いなく自分自身の糧になりました。 学生の皆さんへのアドバイスとしては、20代はあっという間なので、自分のために時間を使ったほうがいいということです。大学はすごく刺激的で楽しい環境ですが、遊びすぎずに課題にもきちんと取り組むようにしてください。私がしていたように、学生のうちから現場に飛び込んで経験を積むこともおすすめです。たった一度きりの貴重な大学生活、真面目に、フルスイングで挑戦すれば、きっと大きく羽ばたくことができると思います。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース卒業。在籍時からイラストレーター・アニメーターとして活動。卒業後はアニメーターや監督補佐を経て、オリジナルTVアニメーション「オッドタクシー」で自身初となる監督・キャラクターデザインを担当。第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞。アニメーションディレクター/イラストレーター14年メディア芸術卒業木下麦
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