04水谷美結「離脱」ハサミで紙を切り離す映像を投影すると、腕が徐々に不可視になることで、身体の所有感が揺らぐ体験をつくる試み。左:映像が突然暗転することで、そこまで見てきた変化から「映像のその後を想像する」体験をつくりだす「Imagine Yourself」(2019)、中2点:スマートフォンの映像を逆方向に動かすことで、文章が空間に定着しているように感じさせる「空間に定着する文章」(2020)、右:視線の持つ直進性という特性を使って、ふたつのオブジェクトを画面外で合成する「視線の設計」(2023) 皆さんが一般的に思い浮かべる「映像」は、スクリーンやディスプレイに映し出されるものだと思います。しかし、身体に映像を投影したらどうなるでしょうか? 既存のメディアの形状から解放されることで、身体拡張や体験設計にまで踏み込んだ動的な情報をデザインできるのではないか──。私が担当する社会をよりよくするためにデザインには何ができるか?授業では、まず初めにそうした問いを学生たちに投げかけ、映像をきっかけに人間の知覚や新しいデザインを考えてもらっています。なかには、手の平の上に、動くコマの映像を投影する学生もいました。面白いのは、コマの動きに合わせて、投影された人が手の形を調整する反応を起こしたこと。映像そのものを問い直すことで生まれたこうした「気づき」が、新しいアイデアの源になるのです。 デザインやアートを学んだ人に社会が求めているのは、このように既存のものへ疑問を高橋海松「walk around」人が歩き回ったりよじ登ったりする映像を投影することで、手を隆起した地形と見立てる試み。井上裕未「プールで泳ぐ」静止した泳ぐ人を指の曲面に沿わせるように動かすと、水面と水中を行き来しながら泳ぐように見える。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、ピープル株式会社にて乳幼児向け知育玩具の企画開発に携わる。人間の知覚能力に基づいた新しい表現の在り方を研究し、映像や展示、文章をはじめとした様々な分野で活動を行っている。2012年、「D&AD Awards イエローペンシル」を受賞。持ち、そこから新しい価値を生み出すことです。問題を発見し、解決し、社会を1ミリでもよりよい方向に進める根底の力がここで身につくはずです。学生の皆さんには、自分から新しいアイデアや価値を生み出していける人に育ってほしいと思っています。課題身体に何らかの光(映像や画像)を投影することで、新しい皮膚の質感・感覚・意味を作り出す体験を設計しなさい。映像そのものを問い直し 新たな価値を生み出す統合デザイン学科 3年「菅プロジェクト」担当:菅俊一 先生
元のページ ../index.html#4