TAMABI NEWS 95号(漫画という表現力)|多摩美術大学
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(97年プロダクトデザイン卒)「G-SHOCK」をはじめとした時計や楽器、電卓、電子辞書などさまざまな分野の商品を手がけ、国内外問わず巨大な市場を持つグローバルブランド。「創造 貢献」を経営理念に掲げ、人々の暮らしのなかに溶け込み、新しい価値を生み出し続ける企業を目指す。 当社では、みなさんにお馴染みの「G-SHOCK」をはじめ、電子楽器の「Privia」や「Casiotone」など、多くのヒットブランドのデザインを多摩美の卒業生が手がけてきました。多摩美生に共通して感じるのは、自分なりのポリシーを持ち、芯がしっかりしているところです。多摩美らしさの特徴として、「思いの強い」学生が非常に多い印象を受けます。自分のデザインをきちんと第三者に伝えることができ、その思いが表現された作品のレベルも総じて高いです。 近年、リーダーシップを持ってデザインの可能性を広げ、事業を推進していけるデザイナー人材が求められようになっています。多摩美生はその像に合致し、当社でもリーダーやマネージャーとしてチームを引っ張っている人も少なくないため、社会での活躍の場は今後ますます広がっていくでしょう。 楽器のプロダクトデザインを中心に担当しています。プロダクトデザインチームの一員として携わった電子ピアノ「Privia PX-S7000」は、Priviaシリーズの最上位モデルで、美しくモダンなデザインと新たな演奏体験の実現を目指し、従来のピアノとは異なる世界観を追求したものです。社内の複数部門の力を結集して完成した同製品は、国際的に権威のある世界三大デザインアワードのひとつ、ドイツの「iFデザインアワード2023」で最高賞のゴールドアワードを受賞しました。 多摩美の学生だった頃、自ら問題提起して、課題の発見から解決までリサーチしながらデザインにつなげるという授業がありました。会社では、指示された仕事をこなしているだけでなく、社会の問題などを自ら見出し、価値ある解決策を提案していくことが問われていると感じます。そういった姿勢は多摩美の授業で根付いたものです。加えて、多摩美らしいといわれる「思いの強さ」も、デザインの仕事の原動力になっています。私自身、在籍した会社で口々に「多摩美の学生は思いが強いよね」と言われてきましたから(笑)。開発本部 デザイン開発統轄部デザイン戦略室 チーフデザイナー開発本部 デザイン開発統轄部アドバンスデザイン室 楽器担当のデザインディレクターとして、製品単体のスタイリングのもう一段上のレイヤーで、ディレクション業務を行っています。「Privia PX-S7000」でも、デザインコンセプトの策定と、デザインチームのメンバーそれぞれの個性やスキルを活かしつつ、コンセプトに合ったプロダクトデザインにまとめ上げることが私の役割でした。世の中の当たり前を崩して、新しい体験や価値の提供をデザインで創り上げていくのが面白く、やりがいを感じるところです。 私は「コンセプトメイキングが得意」と社内で評価してもらうことがあるのですが、これはひとえに多摩美での学びの賜物だと思っています。際立って身になっているのは4年生時の卒業制作につながる事前課題です。異なる2つの分野のことを調査・研究して深く考察し、得られたことを組み合わせ、自分なりの新しい視点を生み出して卒業制作に挑むという内容でした。「Privia PX-S7000」にしても、ピアノのみを探究していたら、「ライフスタイルに調和するピアノ」という解には到達できなかったはずです。大学時代は自分の興味や価値観にとことん向き合える貴重な時間です。多摩美はその環境が充実しています。未知なる可能性を突き詰めて、個性をとがらせください。 ブランドデザイン室に所属し、ブランドの価値向上に取り組んでいます。ブランド構築のために、イメージの言語化と視覚化を行い、プロモーションの際にはアートディレクションを担うこともあります。 「Privia PX-S7000」でいえば、ブランドステイトメントとして「In Harmony with Life」を軸とするところからスタートしました。これが言語化です。デザイン部に限らず、関係部署を横断したプロジェクトチームを結成し、議論を重ねました。そうして言語化したイメージをもとに、目指す世界観をコンセプトアートとして視覚化します。どのような部屋で、どのようにピアノが置かれるのか。写真のトーンやインテリアまで明確にし、出来上がったコンセプトアートをプロジェクトメンバーで共有しました。 ブランドデザインにおいて情報を伝える手段は、文章、図、写真などさまざまあり、それらを整理して最適解を出さなければなりません。この一連の過程は、振り返ると、多摩美の情報デザインの授業そのものだと気づきました。メーカーでは最近、若手でもアイデアが面白ければ採用されるなど、チャンスは広がっています。多摩美生の「思いの強さ」を武器に、自分のやりたいことを切り開いていってほしいと思います。(11年プロダクトデザイン卒)(07年情報デザイン卒)本記事は連載企画です。さらに詳しい内容や他企業情報はWebでご覧になれます。開発本部 デザイン開発統轄部アドバンスデザイン室 リーダー開発本部 デザイン開発統轄部ブランドデザイン室 室長メーカー多摩美出身者は、ビジネスの最前線からどのような評価を受けているのでしょうか。また、その卒業生たちが学んだ多摩美での4年間は、ビジネスの現場でどう生かされているのでしょうか。さまざまな業界で活躍する企業人たちに尋ねました。11世界的なデザインアワードで最高賞を受賞人に伝える「思いの強さ」が原動力菱山浩昭さん神出 英さん中村周平さん村田史奈さんカシオ計算機

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